番外編
ぼくの決意とワガママ
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れる涙を我慢出来ずにポロポロと流しながら、涼風は、ぼくに昔の事を話してくれた。ぼくの想像をはるかに超えた過酷な過去に、涼風は苦しめられていた。4人の仲間の死に責任を感じて……一人の男の影にずっと苦しめられて、涼風はずっとこの鎮守府で、一人で震えて生きてきたようだった。
「ん……」
ぼくの胸の中から、涼風が離れた。ぼくの手を離して寝返りをうち、仰向けになった涼風の寝顔は、本当に綺麗だ。
今、ぼくの隣で、心から安心しきった寝顔をぼくに向ける涼風は、過去の話をしている間、ずっと……ずっと怯えた顔をしていた。
――あたいが、仲間を殺しただなんで、知られたくなぐで……
知られたら嫌われそうで……
そう言ってビクビクと肩を縮こませ、ぼくの手をギュッと握り、必死にぼくと一緒にいたいと訴える涼風を見て、ぼくは、二人でデートした時に出会った、今川焼きの素敵なお姉さんの言葉を思い出していた。
――守ってやんな!
あの瞬間、ぼくの胸の中に、使命感のようなものが芽生えた。
――ここにいられる間は、世界で一番大切な涼風を守る
今、ぼくの隣で、半開きの口からよだれを垂らしつつ、幸せそうに眠る涼風。彼女は、『自分が仲間4人を沈めた』という間違った罪悪感を捨て去った。彼女を苦しめていた鎖の一つは、無事に今日、外れたみたいだ。
でも、涼風を縛る鎖は、もうひとつある。
――俺の涼風……俺だけの……涼風ぇぇぇえええ
涼風をここまで苦しめた元凶の男の存在は、まだ解決してない。脱獄したという話だから、いずれ涼風の前に姿を表すのかも知れない。
いつもあんなに元気に輝いてる涼風から、笑顔を奪った男。その男がもし再び、涼風の前に姿を見せた時は……ぼくは、絶対に涼風を守る。
――だから……
涼風の、無防備な左手を握った。涼風の手はいつもあたたかい。涼風はいつも『ゆきおの手、あったけー』て笑顔で言ってくれるけど、ぼくから言わせれば、涼風の手の方があたたかい。まるで、優しくて元気な涼風本人みたいだ。
「……涼風」
「んー……むにゃ」
涼風の顔を覗き込み、その綺麗な顔を眺めた。頭にふらふらと手が伸び、なでてしまう。
「ん……」
涼風……ぼくは、涼風を嫌いになったりしないよ。二人で一人の……あこがれの涼風を嫌いになんてならないよ。ぼくは、ずっと涼風を守り続ける。
「だから安心して。ぼくは、涼風の隣りにいるから」
「……」
「ぼくは、涼風を守るよ。その男からも、がんばって守るよ」
「……ギリッ……!」
そんな恥ずかしいことを口ずさんだけど、涼風の歯ぎしりが聞こえたことで我に返った。今のつぶやき、聞かれてないかな……そう思い注意深く寝顔を伺うけれど、起きた様
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ