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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
ぼくの決意とワガママ
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「ふんッ……!!」

 本は思いの外重くて、ぼくの力では持ちあげられない。非力な自分が情けない。

「んッ……ぐぐッ……!!!」

 渾身の力を振り絞り、なんとか本を持ち上げる。そのまま全力を込めて本を手元に持ってきて、そして、布団をかぶせた自分の足の上にドスンと乗せた。

「ハァ……ハァ……」

 情けない……本を持ち上げただけなのに……たったそれだけなのに、こんなに息が上がってる。悔しさが胸にこみ上げる。涙が出そうになるけれど、それをグッとこらえる。少し大げさに息を吐き、ツンとした鼻の奥の痛みをなんとかこらえた。涼風には……ぼくに勇気をくれた涼風にだけは、こんな情けない姿は見せたくないから。

 少しずつ息を整え、ある程度収まったところで、ぼくは本のページをめくった。『魚雷・雷撃』の項目だ。ぐちゃぐちゃになりそうな気持ちをなんとか沈めたくて、ぼくはそのまま文章を読み進めていく。正直なところ、冷静になれるのなら、内容なんかどうでもよかった。

 不意に、トントンと静かなノック音が鳴り響いた。

「?」

 涼風かとも思ったけれど、その割にはいつもの元気がない。いつもなら、『ドカンドカン』とうるさいノックをしてくるのに。これはきっと、涼風じゃないな。ちょっと残念だけれど。

「はーい」

 とりあえず返事をしてみる。ドアの向こうから聞こえてきた相手の返事は、ぼくにとって予想外の人物だった。

『ゆきおー。あたいだ』

 予想外だった。あのノック音は絶対にありえない……そう思った涼風だった。

「え? 涼風?」
『うん』
「入っていいよ。どうぞー」

 返事の仕方も違和感しか感じない。そのことに疑問を感じながら、涼風を中に招き入れる。ドアノブが静かに回り、カチャリと静かにドアが開いた。

……

…………

………………

 あの時は、涼風が何に苦しめられているか、よく分からなかった。本人が言うように、ただ戦う勇気がないだけの、悪く言うと艦娘っぽくない、でも良く言えば、ぼくみたいな人間と同じく、悩み苦しみながら、でも精一杯前に進もうとする、とても真面目な人なんだとしか思ってなかった。

 だからぼくは、『そんなことないよ』と、涼風を励ました。涼風は、ぼくの憧れの艦娘なんだから……ぼくを大海原に連れ出してくれて、怒り心頭の摩耶さんに『もうちょっとここにいていい?』といえる人に、勇気がないなんて信じられないと、涼風の肩を押したつもりだった。

 でも、今にして思えば……どうして、あんなに無責任で、上辺だけの、いい加減なことを言ってしまったんだろうと思う。

―― あたいたちが前にいた鎮守府がさ……すごくひどいところだったんだ

 今日、涙を必死にこらえ、それでも流
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