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俺の涼風 ぼくと涼風
番外編
ぼくの決意とワガママ
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んでいた粉薬。あまりの苦さに、母さんが飲んでる最中に吹き出してしまって、周囲の空気が苦くなってしまった、あの粉薬だ。

 水差しから水を一杯、コップに汲んだ。緊張で胸がイヤな鼓動を繰り返す。開いた包みを右手に持ち、水が入ったコップは左手に持つ。口に水を一口含み、意を決して、右手の粉薬を一気に流しこんだ。

 途端に口の中に広がる、強烈な青臭い苦味。ピーマンやにがうりの苦味を何倍にもしたような、舌に突き刺さってくるようなとてもイヤな苦味が、ぼくの口の中に広がった。

「ゲフッ!?」

 『良薬口に苦し』とはいうけれど、それでも、ぼくの身体はこの薬を飲み込みたくないようだ。ぼくは咳き込み、口の中の薬と水を口から盛大に吐き飛ばした。

 薬をもうひとつもらっておいてよかったと安堵し、キャスターの引き出しからもうひとつの包みを取り出す。その時、ぼくの口から吐き出された粉薬と水で汚れた、この部屋の床が視界に入った。薬を飲み終わったら、拭き掃除しなきゃ……

 再度包みを開き、口の中に水を含んで薬を口の中に流し込む。途端に口の中に強烈な苦味が再び広がり、ぼくの身体が再び拒絶反応を起こす。この上ない嘔吐感が、口の中の粉薬を吐き出そうと拒絶するが、ぼくはそれを根性でねじ伏せた。

「……んぐッ!」

 力を込め、かろうじて薬を水ごと飲み込む。口の中はまだ苦い。コップの中の水の残りを慌てて飲み干し、口の中に残る薬の苦味を洗い流した。

「ハッ……ハッ……」

 口の中の苦味が消える。いつまでも口の中に残るタイプの苦味じゃなくてよかった。でも、これを飲むならピーマンを食べるほうが何倍もマシだ。そう思えるほど苦い。母さんのことを尊敬する。こんなに苦いものを毎日飲んでいたんだから。

 でもこれからは、僕も毎日飲まないといけないんだけど……。

 コップをキャスターの上に置いて、脇にかけられた布巾を取った。床にこぼしてしまった水と粉薬を拭き取らないと。時間はお昼すぎ。いつもどおりなら、そろそろ涼風が顔を出す。それまでにはなんとか床を拭いて、室内の空気も入れ替えておかないと。ぼくは涼風が来ないうちに入り口のドアを開いて空気を入れ替え、そして床をささっと拭き掃除しておいた。

 そのままある程度時間を置いたところで、再び入り口のドアを閉じ、ベッドに入る。相変わらず窓は全開に開いていて、外から冬の空気の冷たさが部屋に入ってくるけれど、今は閉めたくない。閉めれば、なんとなく息苦しく感じてしまいそうだから。

 気持ちを落ち着かせたくてきょろきょろしたら、キャスターの上に置いてあった『艦隊戦』と書かれた本が目に入った。昨日『艦娘になりたいならこれでも読め』と言って父さんが置いていったものだ。その本を取ろうとキャスターに右手を伸ばした。

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