第四話 友
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ようなある意味平穏な学園で抜くこと自体、異例の事態なのだ。彼女が魔剣を露わにすることそれすなわち命を賭した死合を意味する。
それを良く理解していたエヴァンは、だからこそそのようなことを宣う紫雨を認めざるを得なかった。
「お嬢を悲しませないでください。それがオレの最大の、いいやオレの唯一の願いです」
そのエヴァンのお願いを、紫雨はゆっくりと首を縦に振り、たった一言で応えた。
「心得た」
◆ ◆ ◆
紫雨が月夜と友となれた同時刻。
とある部屋。牢屋とも、個室とも、如何様にも表現できるその部屋に一人の女傑あり。
「フハハ。五剣、そして“魔弾”だけと思えばこれは中々どうして……とんだ竜が混じっていた」
五剣の二振り鬼瓦輪、そして亀鶴城メアリを相手にし、生き残ったばかりか手傷を与えた『女帝』天羽斬々その人だ。
今朝の果し合いはどちらも視ていた。“魔弾”と鬼瓦輪。そして竜とその他有象無象。
“魔弾”は分かり切っていた。彼奴こそまさしく“初見殺し”の極致。大方、無刀とタカを括っていたのだろう。その針の穴程の油断を、“奴”は一息に持って行くと言うのに。
「それにしても、まだ君臨し甲斐のありそうな者がいたとは」
遠目に音だけだけで様子を伺っていた。そこから得られた情報は明らかなに“出来る”人間という事を如実に表していた。
人には一部を除いてほとんど興味を示さない天羽だったが、その竜の存在は決して無視できるものではなかった。
「……これは、パワーバランスが崩れるか? 五剣、そして『女帝』と謳われたこの私と“魔弾”。これだけならまだ良かったのだ。だが、そこへひょっこりと加わってしまった竜がいる」
別に、治安とかそう言った類の煩わしい問題は元より意に介していない天羽。手ずから屠れば良かったのだ。かつて五剣二名相手にそうしたように。
しかして今日を以て認知してしまった竜はそうではない。
勝利を収めることは容易い。問題なのはその代償。
「骨の折れる相手なのか否か、まずは“挨拶”をしに行かなくてはならぬかもしれないな」
ニヤリと、闘争を表情に表せばこのような顔になるのかと思うほど見事な好戦の意思を、天羽は示していた。
それは『女帝』としての矜持なのか、はたまたただ一人の武人としての――――それは誰にも決して分からぬ、そのような深淵であった。
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