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SAO−銀ノ月−
遺愛
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していた。そしてピナのみがここに来たということは、シリカの身に危険が迫っているということであり、クラインの呟きとともにルクスがピナを抱えて語りかける。

「ありがとう、ピナ。休ませられないところ悪いけど、シリカたちのところに頼む!」

「ショウキさん。行かないでください」

 ルクスの頼みにピナは力強く鳴いてみせる。シリカたちのところに案内してくれる気らしく、先程までとは違う戦闘体勢になったメンバーが、とにかくリズベット武具店を駆け出そうとしていった時に。誰かからそんな声がかけられて、辺りを見渡してみたものの、メンバーは誰もがシリカたたちを助けに行こうとしているところで。

「ショウキさん。行かないでください。ショウキさん。行かないでください」

「お前……」

 そう壊れたレコーダーのように繰り返していたのは、俺たちの中の誰かではなく、リズベット武具店のカウンターにいる店員NPCだった。こんな時にクエストが発生する訳もなく、突如として彼女はそのようになってしまっていて。今なお襲われているかもしれないリズたちのことが頭をよぎるなか、俺は店外に駆け出そうとしていた足を止めた。

「みんなは行ってくれ……リズたちを、頼む」

「ショウキくん……?」

「任せてくれ。アスナ、行こう」

 リズベット武具店の外へ――助けを求めるリズたちから背を向けると、壊れたレコーダーと化した彼女へと立ち向かった。疑問の声を向けてくるアスナを引っ張っていくキリトたちに、リズたちのことは任せておくしかないという判断のもとで。アイテムストレージから日本刀《銀ノ月》を取りだし、腰に帯びることで普段通りの戦闘準備を完了させる。

「ショウキさん。行かないでくださ――」

「……もう、いい」

「――あ、そう?」

 無表情で淡白ながらもたんたんと仕事をこなしてくれた店員NPCが、見たこともない醜悪な笑顔をニヤリと描きだす。どうしてリーベ側にこちらの事情は筒抜けだったのか、どうしてリーベはこちらの作戦や方針にことごとく先回り出来るのか、その答えはただ一つ。彼女が直接、その耳で俺たちの話をずっと聞いていたからだ。

「リーベ……!」

「いろいろ苦労したんだよ? 店員NPCのふりするの。だけどショウキくんのその熱い視線に免じて許してあげる! ううん……でも……」

 店員NPC――いや、店員NPCのアバターをしたリーベこそがその真相。ずっとログインしたままではいられないことから、恐らくは店員NPCを乗っ取ったり完全に成り代わったりという訳ではなく、店員NPCとは別個体のままそこに存在している。それから時期を見て入れ替わっていたのだろうが、それはどのような方法かを考えている暇など既になく。圏内だろうと構わず腰に帯びた日本刀《銀ノ
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