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SAO−銀ノ月−
遺愛
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……しかして愛は、そんなことで諦めるわけもなく。様々なVR空間で、様々な実験を繰り返していった。あの《死銃事件》もその一環に過ぎなかったが、そこで愛はちょっとした掘り出し物を発見していた。さらに『デジタルドラッグ』の構想も浮かび、回収を逃れた自身のナーヴギアとともに、愛の目的に必要なファクターは全て揃っていた。

「もうすぐだから……待っててね。お兄。でもさ、せっかくだから遊んでから逝くね! ……あ」

 未だにVR空間にいるだろう兄へ宣言しながら、リーベはふと思うことがあった。あのデスゲームから生きて帰ってきた者たちを、SAO生還者などと呼んでいるらしいが、ならば自分はどう呼ばれるべきなのか、と。

「SAO……失敗者? 《SAO失敗者》とか、なんかイイかも!」

 生還するどころかたどり着いてすらいない、だけどまだチャンスはあるという祈りを込めて。今回は失敗してしまったけれど、次こそはあの浮遊城で思いっきり遊ぼうと……ただ、そんな祈りを。

 ――日記のページを捲る。ただし後のページは全て白紙であり、まるで途中で書くのを飽きてしまったかのようだ。ただし最後のページには、親愛なる掘り出し(ショウキくん)へ、という文字とともにナーヴギアの落書きが刻まれていて、それで本当にこの日記は最期を迎えていた。


「……ってことだ、そうだ」

 ――リズベット武具店。彼女の家で起きたことと日記の内容を、そこに集まっていたメンバーに語り終わる。リアルの方で忙しいレインにセブンの姉妹に先の戦いで倒れているシノンを除いて、どうやらリズの状況説明と時間が上手いこと噛み合ったらしく、当のリズは不在ながらも多くのメンバーが工房に集合していた。キリトにエギル、クラインは厳しい表情を隠さないでいたが、アスナやルクスにグウェンはいたたまれない表情で沈黙していた。

「ショウキが必要ってのはどういうこった?」

「……さあな」

 クラインからの問いに曖昧な答えを返す。どうやら文中の『GGOで見つけた掘り出し物』というのは自分のことだったらしく、愛――リーベの計画には俺の存在も含まれているらしい。俺、デジタルドラッグ、ナーヴギア、それらの要素が計画通りに合わさった時、彼女はVR空間で死ぬことが出来るのだという。依然として意味は分からないままだが、彼女の目的はハッキリしたもののまだしこりは残る。

「お兄さんが亡くなった場所で死にたい……ということだよね……」

「やりきれねぇが……同情は禁物だぜ。なにせ《死銃事件》で間接的だろうが人を殺してんだからよ」

「……そんなことはどうでもいいのよ。あたしは力を貸して欲しいって言われたから来たんだけど?」

「ああ。俺が呼んだんだ」

 ルクスの同情的な意見にエギルの厳しい現実の指摘
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