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SAO−銀ノ月−
遺愛
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どしかないため、あまり兄妹に関わりたくはないらしい。とはいえ生活はさせてくれているので、兄からすれば頭の上がらない存在だったが、妹の愛は彼らがあまり好きではないらしく。

「分かった分かった。叔父さんたちもだけど、ウチらの倹約生活にな」

「日に日に減っていくおかずくんに報いるために!」

 苦笑いする兄の提案に愛のハガキ仕分け速度が上がる。その親戚から送られてきた生活費を切り詰められるだけ切り詰めて、ようやくこれだけの《SAO》への懸賞を用意できたのだ。しかして現実は厳しく、まるで当選していた懸賞はない。親戚たちもまさかゲームを買わせるために仕送りをしているわけではなく、こちらに興味はないにしろ、兄からすれば申し訳ない気持ちはあった。

「パソコンの方も……ダメか」

「ハズレ……ハズレ……ハズレ……ハズレ……あれ? 当たりが足りない……」

「どこのホラーだよ……ん?」

 それでも兄妹は、こんな生活は嫌いではなかった。愛が小さいときに両親が事故で亡くなったために、妹を育てるのに自分が好きなゲームでともに遊んでいたためか、愛はこんな風に育ってしまったが。その件については頭を痛めていた兄が、ふと手に取ったハガキには、ゲーム好きな兄妹が揃って手に入れたかった懸賞がそこにはあった。

 ――日記のページを捲る。

「届いたぞー!」

「わーい!」

 いつでも受け取れるように大学をサボっていた兄と、高速で義務教育を終わらせてきた妹の歓喜の雄叫びが家中に響き渡った。配達人から引ったくる気持ちで荷物を受けとると、つい今しがた発売されたばかりの新作ゲーム《ソード・アート・オンライン》が顔を見せた……ただし、一つだけ。 

「増殖してたりしてないよなぁ。じゃあ……」

「お兄。はい、どーぞ」

 ……もちろん、懸賞で兄妹二人の《SAO》が両方とも当たる、などということはなく。なんとか《ナーヴギア》は二つとも用意出来たものの、やはり《SAO》に関してはそう上手くはいかなかった。そんな分かりきったことに兄は苦笑しながら、ひとまずは妹にプレイさせようとしたところ、他ならぬ妹からソフトとナーヴギアを手渡されて。

「お兄ってば、いつも自分のことは後回しだし。たまにはいいんだよ?」

「え? いや……でもな……」

「それに、お兄はそろそろ就職じゃん? ゲームなんてやってる暇あるのぉ?」

「ぐっ……」

 大学生としては痛いところを突かれる兄を、愛はからかい半分と愛しさが半分が籠った視線で見つめていて。それでもまだ逡巡する兄に、半ば以上に無理やりナーヴギアを押しつけると、妹は逆に自らのピンク色に塗装したナーヴギアを大事そうに抱え込んだ。

「お兄が就職活動中に存分にやるもんねー」

「お前だっ
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