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武装少女マキャヴェリズム〜東雲に閃く刃〜
第二話 必殺剣、仕る
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肢は消えた。
 しかしてそれで終了する紫雨ではない。

「あの! 東雲さん! 今、鬼瓦さんに謝ればまだ許してくれるはずですよ!」
「素直に頭を下げる者に酷い仕打ちをする鬼瓦さんじゃないような」

 これは紫女子『倉崎(くらさき)佐々(さっさ)』とその友人である『右井(みぎい)右井(うい)』のせめてもの優しさであった。
 自分達だって鬼ではない。ここで紫雨が折れてくれるのなら、出来うる限りの便宜を図るつもりである。
 紫雨とてその意図は良く理解出来ていた。しかし、あの時にはもう答えは固まっているのだ。なれば、返す答えはもはや動かぬ。

「正しい道を歩いている者が頭を下げるなど、それすなわち全面降伏。そのようなもの言語道断。私は往く。行って納村に助太刀する」
「も、もう! ういちゃん! こうなったら武器を取り上げて大人しくしててもらいましょう!」
「あんまり抵抗しないでね。痛めつけたくないような」

 警棒を構える倉崎と右井。他のクラスメイトは手を出さずに見守るだけ。否、二対一という圧倒的な状況なのだ。手を出す必要さえないという判断である。
 紫雨はふとその状況に疑問を感じ取る。先ほどは二人以上で来たというのに、この倉崎と右井が前に出ただけで戦意が薄まったのが不可解。
 ――その紫雨の問いへすぐに回答が出された。

「行くよ、ういちゃん!」
「りょーかい」

 上段の構えから打ち出される警棒を上部水平に構えた竹刀で防御する紫雨。
 そこから一息に抜き胴を決める腹積もりであったが、真横からぬるりと仕掛けて来た右井を視界の端に捉え、それを断念。一拍距離を開けることにした。

「階段を下るがごとく流麗な連撃、見事。あのまま欲を張っていればそこのウイとやらに一本取られる所であった」
「それは素直に嬉しいような」
「ういちゃん! もう一回いきましょう! 今度はもっと速く!」
「おっけー」

 前方には倉崎。横には右井。十字砲火に似たこの立ち位置はいくら紫雨とて捌き切るのは難しい。それも、呼吸がぴたりと合う二人を相手にするのならばなお至難の業。
 正面を受ければ側面から取られ、側面に気を取られれば正面から打ち込まれる。一歩下がれば、倉崎と右井がそれに合わせてにじり動く。
 このままじわじわと打ち込まれ続ければ消耗戦必至。
 そうなる前に決める。

(必殺剣、抜き所か……)

 今度は同時に仕掛けてきた倉崎と右井。下がることで倉崎の突きをやり過ごし、牽制に振るった横一閃で右井を縫いとめる。
 距離を保つことは容易い。そして、そこからもう一歩を踏み出すことが出来れば。
 深呼吸を一度。そして紫雨は必殺の構えを取る。

「東雲さんの構えが変わった?」
「“突き”の構えのような……」

 
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