第三十九話 蒔かれた種
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6世を入れて7人がゲルマニア選帝侯だった。
……
久しぶりに6人の選帝侯が集まったが、室内は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「皇帝陛下はご無事だろうか……
「もしものときの事も考えておなければならない。これから我らは、どうするべきか……」
皇帝の安否を心配しているのは、オーストリ大公とブランデルブルク辺境伯だった。
表面上は深刻そうに心配している様に見えるが、本当は皇帝死後、次の皇帝選挙の際の腹の探りあいをしている事は他の選帝侯は知っていた。
「ったく、白々しい」
吐き捨てたのはザクソン大公で、褐色の肌と燃え上がるような赤い髪が特徴の偉丈夫だった。
「皇帝陛下のご回復を我々で祈りましょう」
でっぷり肥えた腹を揺らしメインツ大司教は言った。
「売僧も、いちいち五月蝿い」
聞こえないようにザクソン大公は呟いた。
バウァリア大公はヘラヘラと愛想を振りまいていた。彼は彼で頑張っているが印象が薄かった。
一方、我関せずで、ブツブツと不機嫌に独り言を言いながら貧乏ゆすりをしている2メイルの大男はフランケン大公。
戦場に出れば勇猛果敢で、かの烈風カリンと互角に渡り合ったという猛者だったが、戦場以外だとパッとせず、しかも恐妻家で知られていた。
彼は、領内で起きた大火事や山賊被害に妻の事等々で事で頭が一杯で、選挙どころではなかった。
コンラート6世の治世は60年以上で、息子の皇太子も子供を残すことなく親より先に死んでしまい、ボヘニア王家は断絶の危機にあった。
野心家達にとって、これ以上無い好機だった。
「申し上げます!」
家臣が部屋に駆け込んできた。
「どうした!」
とうとう死んだか……とは言わない。
「典医殿のお話では、皇帝陛下は峠と超えたとの事」
「おおそうか、それは良かった」
いい加減しぶとい……とは思っても言わない。
「ともかく、皇帝陛下のご回復を祝って一杯飲ろうではないか」
『おおーっ!』
次期皇帝の駆け引きを続ける選帝侯の中で、マクシミリアンが内乱の種を蒔いた事に気付く者は誰も居なかった。
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