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水の国の王は転生者
第三十九話 蒔かれた種
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決して表に出る事はなかった。
 今までは独立国の色が強く形式上の属国だったクルデンホルフ大公国だったが、多額の上納金と軍隊の解体と廃止で事実上トリステイン王国の完全な属国へと成り下がった。





                      ☆        ☆        ☆






 とある日、マクシミリアンが新宮殿の執務室で政務を行っているとノックの音が聞こえた。

「誰だ」

「クーペでございます」

「おお、お帰り。入ってくれ」

 入室を許可すると、旅装姿の青年に変身したクーペが入ってきた。

「ご苦労様。首尾はどうかな?」

「上々でございます」

「そうか」

 反乱中、マクシミリアンはクーペにゲルマニア介入を妨害する為の工作を命じていた。
 その甲斐あってか、ゲルマニアは介入してこなかった。

 それともう一つ、クーペに命じた事があった。

 それはゲルマニアの内部分裂を引き起こす事だった。
 将来的にロレーヌ地方の統一と、巨大国家ゲルマニアと陸続きでいるという事は安全保障上看過できない問題で分裂が無理なら、せめて力を削ぎたいと思っていた。

 工作内容を説明する前に、帝政ゲルマニアのルーツを辿らなければならない。

 元々、ゲルマニア人はゲルマニア地方を含めたの広大な土地に、非ブリミル教の大小様々な部族が分布していた。
 だが、数千年前に東方から騎馬民族が流入し、東ゲルマニアは荒らされ、そこに住んでいた東ゲルマニア諸部族は西へ西へと逃げていった。

 これを、ゲルマニア民族の大移動という。

 危機感を募らせた、ゲルマニア西部の部族の族長らは、ガリアやトリステインといったブリミル教国家にブリミル教への帰依を条件に援軍を要請した。
 大量の帰依者を出す事からロマリアからの強い後押しもあり、ガリア王国・トリステイン王国は渋々快諾、かくしてブリミル教国家とゲルマン諸部族の連合軍と騎馬民族との会戦で騎馬民族を撃退することに成功した。

 魔法の威力をその目に焼き付けたゲルマニア諸部族は、魔法を得る為に貴族や元貴族との婚姻を奨励し、永い時間をかけて魔法を使えるようになりゲルマニア貴族が誕生した。部族はやがて都市国家になり、それら都市国家が集まることで現在の帝政ゲルマニアになった。
 この時の形振り構わない婚姻政策で、後に『ゲルマニア人は好色で多情』と言われる原因にもなった。

 撃退から千年後、帝政ゲルマニアは騎馬民族によって奪われた東ゲルマニアの奪還を目指したが、かつての自分達の土地には別の民族が住んでいた。
 彼らはスラヴ人といって、北方から流入してきた非ゲルマン民族で、騎馬民族が去り空白地帯となった東ゲルマニアを始め様々な土地に移り
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