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俺の涼風 ぼくと涼風
22. 本当のぼく
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そういやお前、ゆきおのカーディガン着てるのな」

 提督が、私が羽織るゆきおのカーディガンの肩をつまみ、少し嬉しそうにつぶやいた。引っ張られたカーディガンの肩が少しつっぱり、ふわっとした感触の生地が、私の肩の素肌に密着した。

 ……消毒薬の香りがした。

「ゆきおからもらったのか?」
「うん。昨日の夜、ゆきおが『ぼくはもういいから』って」
「……」
「指輪と一緒にくれた」
「そっか……」

 私の答えを聞き、提督は喉を鳴らしてククッと笑う。何かおかしなことでも言っただろうか。自分の言葉を振り返るが、そんなことを言った覚えは、私にはない。

「ぷっ……くく……」
「提督?」
「ああごめん。別にな。お前を笑ってるわけじゃないんだ」
「?」
「いやな。昨日、俺のとこにもゆきお来たんだよ。いつもの真っ白な部屋着だけでさ。カーディガンは羽織ってなかったから、きっとお前のとこに来たあとだったんだろうな」

 私にカーディガンと指輪を渡したあと、ゆきおは提督に会いに行ってたのか。だからあの時『行かなきゃ』って言ってたのか。

 提督の前に現れたゆきおは、提督に、ある宣言をしてきたらしい。

「宣言?」
「大したことじゃない。思春期の男にはありがちな妄想なんだが……」
「ゆきお、なんて言ったんだ?」
「いやな? 俺に『今までありがとう』って言ったあとな……」

――父さんには、母さんがついてる。母さんがずっと、父さんを見守ってる
  だからぼくは、父さんとじゃなくて、涼風と一緒にいる
  ぼくは、涼風と二人で一人だから

「てさ」
「……」
「いっちょ前にな。……あいつはあいつなりに、惚れた女を守りたいんだろうさ」
「……」

――ぼくと涼風は、二人で一人だから

 私の鼻に、消毒薬の香りが……ゆきおの匂いが、再び届いた。

「そっか……ゆきお、ずっとあたいと一緒にいたんだ……」
「多分な。アイツの母親が今も俺を見守ってるように、きっと雪緒も今、お前のこと、見守ってる」
「ゆきお……」

 左手の指輪を見る。ほのかに柔らかく輝く指輪は、まるでゆきおのように優しく、そして綺麗だ。

「……」

 左手を自分の胸に当てる。ゆきおの温かさが胸にあふれた。肩のカーディガンも、私の肩を温めてくれる。

 私は、ゆきおはいなくなってしまったと思い込んでいた。二人で一人だと言ってくれたのに……私のそばにずっといると言ってくれたのに、約束を破って、私の元から離れたと思っていた。

 でも、それは違ってた。ゆきおは、昨晩私と別れた後も、ずっと私と一緒にいた。私の胸を温め、私を抱きしめてくれていた。私とずっと一緒にいてくれた。

 だって指輪を見れば、ゆきおの名前を呼んだ時のように
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