22. 本当のぼく
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付くよな。それでも……いや、だからあいつは、残り少ない命を、お前を助けることに使おうとしたんだ」
「ゆきお……」
「自分の息子ながら、あいつに惚れなおしたよ。思わず『行け』って言った。『惚れた女を取り返してこい』って言っちまった」
そして摩耶姉ちゃんとの出撃の寸前。最後までゆきおの代わりに、命令違反覚悟で出撃しようとする榛名姉ちゃんに対し、ゆきおはこう言ったらしい。
――ぼくは……ゲフッ……もうすぐ、死にます
それでも引かない榛名姉ちゃんと、一歩も引かず言い合いを繰り広げた後、最後は榛名姉ちゃんが折れたそうだ。自分の艤装を、摩耶姉ちゃんに託して。
東京に行く前のゆきおを思い出す。ゆきおは、ずっと咳き込んでいた。とてつもなく苦い薬をがんばって飲んでも、その咳が止まることはなかった。それが、晩年の自分の母親と同じ症状だと分かった時、ゆきおはどれだけ心細かっただろう。母親と同じ薬を出されたその時、ゆきおはどれだけ怖かっただろう。
それなのに、私のことばっかり心配して……私と榛名姉ちゃんを仲直りさせたり、一緒に寝てくれたり……。
ゆきお、やっぱりすごいよ。ゆきおは本当に優しいな。あたいなんか足元にも及ばないほどに。
「……だからお前は、何も悪くない」
「?」
「ひょっとしたら……『自分のせいで雪緒が亡くなった』って思ってるかも知れないけどな。最後にあいつにトドメを刺したのは俺だ」
ゆきおの父親らしい、提督の優しさが胸を打つ。提督は、以前に私を守って4人の艦娘が沈んだことに、私が責任と罪悪感を感じてふさぎ込んでいたことを知っている。だから、少しでも私が気が楽になるように、責任は自分にあると、私のことをいたわってくれている。
……でも私は、自分を責めない。『自分のせいでゆきおが亡くなった』だなんて、絶対に思わない。
だって。
―― 自分を殺したと思ってるって分かったら……多分、とても……つらい
それが、ゆきおにとって一番つらいことだと、ゆきお自身が教えてくれたから。
「……大丈夫。あたいは、自分がゆきおを殺しただなんて、思ってないから」
「よかった」
「だから提督も、ゆきおにトドメを刺したのは自分だとか、思うんじゃねーって」
「……」
「ゆきおは、そう思われるのは……多分、とても……つらい」
「親父の俺よりも雪緒のこと、わかってるんだな……ごめんな雪緒……親父なのにな……」
私を見ていた提督はうつむき、帽子をかぶり直していた。手の影に隠れてよく見えなかったけれど、その時、少し提督の目がきらりと光っていたから、少しだけ、泣いていたのかも知れない。
しばらくの間、ぐすぐすと鼻を鳴らした提督は、一度大きく深呼吸をし、改めて私に顔を向けた。
「
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