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俺の涼風 ぼくと涼風
22. 本当のぼく
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おは……入院してた……?

 ……いや違う。ゆきおは男の艦娘だ。ゆきおは、ここを『男の艦娘の調整施設』だと言っていた。そして『男の艦娘は秘密』だとも言っていた。だからここは、きっと病院に偽装してるんだ。きっとそうだ。そうなんだ。

「ゆきお……どこいるんだよ……ゆきおッ!!!」

 フと思い返す。ゆきおは、私を助けに来た時、私の艤装を装備していた。そして、自分の事を『改白露型駆逐艦4番艦、涼風』だと言っていた。

 てことは、私が思った通り、本当の艦娘になれたんだ。そしてそれが嬉しくて、きっと今、艤装をつけて海に出てるんだ。姉ちゃんズはそれを私に隠してるんだ。私も一緒になって、はしゃいで海に出たりしないように隠してるんだ。きっとそうだ。そうなんだ。

 私は大急ぎで出撃ドックに向かった。足が何度ももつれた。地面の上を転げたのも一度や二度ではない。その度に膝はすりむけ、ゆきおのカーディガンや真っ白いセーラー服が、砂や土で汚れてしまった。だけど気にせず、出撃ドックまで翔けていく。

 鎮守府内を必死に駆けて、ドックに到着した。急いで自分の艤装があるかどうか確認する。きっと今、ゆきおは私の偽装を装備して海に出てる。だから私の艤装はないはずだ。だからスペアの艤装を準備しないと。そう思い、自分の艤装を探す。

「……!?」

 私の偽装は、ゆきおによって持ち去られるどころか、いつもの場所にいつものように、確かにあった。

「……そっか! ゆきお、ついに自分の艤装を手に入れたのか! それで海に出てるんだ!!!」

 思い直す。ゆきおが艦娘になれたのなら、きっと自分用の艤装もきちんと準備されたはずだ。なら、今ゆきおは、自分の艤装を装備して、海に出てるんだ。ならば追いかけないと。ゆきおはまだ、一人で舵を取るのも難しい。同じ改白露型4番艦で、ゆきおと二人で一人の私がいないと、ゆきおは帰ってこれなくなってしまう。

 私は急いで足に主機をとりつけ、海面に立った。加速を溜めているヒマはない。主機に火を入れ、私は即座に出撃する。

「ゆきお……今行くからな……ゆきお……!!!」

 涙が溢れるのを我慢し、私はひたすら走る。そろそろ、二人で初めて海に出た時のポイントに到達する。ここまでくれば、視界を遮るものは何もない。周囲にゆきおがいれば、私なら、絶対に見つけることが出来る。ゆきおと名コンビで、二人で一人の私なら。

「ゆきお!! いるんだろ!!? 返事してくれ!!! ゆきお!!!」

 ゆきおは返事をしない。

「ゆきお!!! どこにいるんだよ!!! あたいとずっと一緒なんだろ!? ゆきおぉぉお!!!」

 ゆきおは返事をしない。

「ゆきお!!! ゆーきーおぉぉぉおおお!!!」

 ゆきおは、返事をしない
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