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俺の涼風 ぼくと涼風
22. 本当のぼく
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んは何も言わず、ただ、真剣な眼差しで私をジッと見つめるだけで、何も答えてくれない。

「なあ榛名姉ちゃん?」
「……はい」
「ゆきお、元気なんだろ? 怪我もすっかり良くなったけど、まだお寝坊さんしてるだけなんだよな?」
「……」

 榛名姉ちゃんが、私から目をそらした。うつむき、右手をギュッと握りしめ、体をわなわなと震わせている。言いづらそうに口をもごもごと動かしては、思い直したようにまたうつむく。

「榛名」
「は、はい」
「ごまかすな。涼風と雪緒に失礼だ」
「……」
「なぁ榛名姉ちゃん!!」
「雪緒くんは……亡くなりました」

 私は一度ドアノブから手を離し、そして後ずさる。そのあと涙が止まらない両目で、今目の前にいる、ウソしか言わない二人の姉ちゃんズを睨みつけた。寒い。ゆきおのカーディガンを羽織ってるはずなのに、体が……胸が、とても寒い。さっきはあれだけ暖かかったのに、今は全身から力が抜けて震えるほど、寒い。

「ウソツキだ!!!」
「……」
「摩耶姉ちゃんも榛名姉ちゃんも、二人ともウソツキだッ!!!」
「涼風ちゃん……」

 体が凍える。震える足でなんとか身体を支えるが……立っているのも大変で、足の震えがガクガクと止まらない。だけど。本当の事を教えてもらわないと。ゆきおが今、どこにいるのか教えてもらわないと。

「摩耶姉ちゃん!! ゆきお、どこにいるんだよ!!」
「……ここにいる。いるけど……もういない」
「ウソツキ! もう摩耶姉ちゃんには聞かねー!!」
「……」
「榛名姉ちゃん!! ゆきおは!?」
「もう、ずっと頑張ってきたらしいですから……もう、休ませて……」
「榛名姉ちゃんのウソツキ!!!」

 二人ともウソをついてる。姉ちゃんズのアホ。肝心なときにウソをついて、全然頼りにならない。これなら、自分で探したほうが早い。そう思った私は、震える足がもつれるのをこらえながら、走ってその場をあとにする。

「涼風!!」
「姉ちゃんたちなんか頼りにならねえ!! あたいが自分でゆきおを探す!!!」

 私は、二人のウソツキに見切りをつけて踵を返し、急いで階段を駆け下りて、自動ドアをくぐって宿舎を出た。外はとてもいい天気。冬の青空が空のずーっと向こうまで広がっていて、私とゆきおが力を合わせて紙飛行機を飛ばした時のように、気持ちのいい風が駆け抜ける。

 私はキョロキョロと周囲を見回し、ゆきおの姿を探した。

「ゆきお……ゆきお……ッ!!!」

 だけど、ゆきおの姿はない。

 振り返り、宿舎の入り口を改めて見た。その時、自動ドアの横に、小さな看板が立てられていることに、はじめて気付いた。

――北条鎮守府内軍病院

 宿舎の小さな看板には、そう書かれていた。ゆき
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