22. 本当のぼく
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んは何も言わず、ただ、真剣な眼差しで私をジッと見つめるだけで、何も答えてくれない。
「なあ榛名姉ちゃん?」
「……はい」
「ゆきお、元気なんだろ? 怪我もすっかり良くなったけど、まだお寝坊さんしてるだけなんだよな?」
「……」
榛名姉ちゃんが、私から目をそらした。うつむき、右手をギュッと握りしめ、体をわなわなと震わせている。言いづらそうに口をもごもごと動かしては、思い直したようにまたうつむく。
「榛名」
「は、はい」
「ごまかすな。涼風と雪緒に失礼だ」
「……」
「なぁ榛名姉ちゃん!!」
「雪緒くんは……亡くなりました」
私は一度ドアノブから手を離し、そして後ずさる。そのあと涙が止まらない両目で、今目の前にいる、ウソしか言わない二人の姉ちゃんズを睨みつけた。寒い。ゆきおのカーディガンを羽織ってるはずなのに、体が……胸が、とても寒い。さっきはあれだけ暖かかったのに、今は全身から力が抜けて震えるほど、寒い。
「ウソツキだ!!!」
「……」
「摩耶姉ちゃんも榛名姉ちゃんも、二人ともウソツキだッ!!!」
「涼風ちゃん……」
体が凍える。震える足でなんとか身体を支えるが……立っているのも大変で、足の震えがガクガクと止まらない。だけど。本当の事を教えてもらわないと。ゆきおが今、どこにいるのか教えてもらわないと。
「摩耶姉ちゃん!! ゆきお、どこにいるんだよ!!」
「……ここにいる。いるけど……もういない」
「ウソツキ! もう摩耶姉ちゃんには聞かねー!!」
「……」
「榛名姉ちゃん!! ゆきおは!?」
「もう、ずっと頑張ってきたらしいですから……もう、休ませて……」
「榛名姉ちゃんのウソツキ!!!」
二人ともウソをついてる。姉ちゃんズのアホ。肝心なときにウソをついて、全然頼りにならない。これなら、自分で探したほうが早い。そう思った私は、震える足がもつれるのをこらえながら、走ってその場をあとにする。
「涼風!!」
「姉ちゃんたちなんか頼りにならねえ!! あたいが自分でゆきおを探す!!!」
私は、二人のウソツキに見切りをつけて踵を返し、急いで階段を駆け下りて、自動ドアをくぐって宿舎を出た。外はとてもいい天気。冬の青空が空のずーっと向こうまで広がっていて、私とゆきおが力を合わせて紙飛行機を飛ばした時のように、気持ちのいい風が駆け抜ける。
私はキョロキョロと周囲を見回し、ゆきおの姿を探した。
「ゆきお……ゆきお……ッ!!!」
だけど、ゆきおの姿はない。
振り返り、宿舎の入り口を改めて見た。その時、自動ドアの横に、小さな看板が立てられていることに、はじめて気付いた。
――北条鎮守府内軍病院
宿舎の小さな看板には、そう書かれていた。ゆき
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ