22. 本当のぼく
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の感触を確かめながら、宿舎の入り口の自動ドアを通りぬけ、私はいつものように、階段を使ってゆきおの部屋のある三階に向かった。ひょっとしたら入れ違いなのかもしれないけれど、それでも一応、ゆきおの部屋に顔を出してみよう。そう思い、階段を一足飛びに駆け上がっていった。
『ダン』という音を響かせ、私は三階に到着した。廊下に出て、ゆきおの部屋の前に向かおうとしたその時。
「あれ?」
ゆきおの部屋の前に、摩耶姉ちゃんと榛名姉ちゃんがいた。
なぜだろう。胸がざわつく。
「おはよー摩耶姉ちゃん」
「……ぁあ、来たか涼風」
「?」
……摩耶姉ちゃんは、私が挨拶したら、いつも笑って挨拶してくれる。それなのに、今日は笑ってない……
「おはよー榛名姉ちゃん」
「お、おはよう……ございます」
榛名姉ちゃんも、仲直りしてからは、いつも花が咲いたように笑ってくれる。それなのに今は、その表情が曇っている……伏し目がちにしか、私と目を合わせようとしない。
「? 二人してここでなにやってんだ?」
「お前を待ってた」
「なんで?」
なぜだろう。右手に力が入らない。体中を嫌な風が吹き抜ける。
「……ま、まいっか。せっかくだから、ゆきおと一緒に話そうぜ。もう起きてるだろ?」
「あの……雪緒くんは……」
榛名姉ちゃんの言葉は聞こえなかったふりをして、私はゆきおの部屋のドアノブに手をかけたが、摩耶姉ちゃんが、ドアノブを握る私の震える右手に、自分の左手をパシッと重ね、私を制止した。
「摩耶姉ちゃん?」
「涼風、落ち着いて聞け」
ドアノブをひねるのをやめる。摩耶姉ちゃんを見た。まっすぐな眼差しで私の目の奥底をじっと見るような、そんな真剣な顔をしている。
私の体から少しずつ、血の気が引いてきた。
「な、なに?」
喉が震えてきた。
「雪緒、ダメだった」
摩耶姉ちゃんの言葉の意味を、私は必死に考えた。頭の回転が止まり、体中の力が抜け、顔が真っ青になっていく感触が、私にも分かった。
「え……ダメって……」
「昨晩だ」
「昨晩って……なにが?」
「昨晩、息を引き取った」
震える喉で、必死に摩耶姉ちゃんに問いただす。
「ゆきおが? でもゆきお、昨日の夜、来たよ? あたいの部屋に来たよ?」
「それはわかんねーけど……昨晩息を引き取ったのは確かだ」
「うそだ……元気だったよ? あたいの部屋に来た時は元気だったよ? カーディガンかけてくれたよ? ほら、指輪だってくれたよ?」
「……」
「なぁ摩耶姉ちゃん。元気なんだろ? ゆきお、怪我もすっかりよくなって、元気なんだろ?」
ウソだと言って欲しくて、私は摩耶姉ちゃんに詰め寄っていく。摩耶姉ちゃ
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