暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十五話 報告と対策と献策
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
すが、常道を慎重に着実に歩んでおります。脅かすことはできても痛撃を与えるのは中々難しい」

「成程」 「――それと、敵は今のところ消極的に動いています。いちど騎兵部隊を集中して叩いたからだと思いますが。本格的な攻城戦を行うにせよ、皇龍道の突破を試みるにせよ、現状の兵力では難しいでしょう。ユーリア姫――失礼、元帥直轄の東方辺境領軍を動かすはずです。六芒郭はそれだけの備えを進めています」


「それもおそらく的外れではないだろうな――そうなると問題となるのは東方辺境領軍が合流した後の動きが重要だ、こちらの動かせる戦力はどうだ」
 鍬井が情報参謀に尋ねる。

「龍州軍は後衛戦闘により甚大な被害を被っておりますが、第三軍の西州鎮台派兵部隊は健在、護州も動員が遅れていますがどちらも〈帝国〉軍基準でも半個師団程度の兵力はある、秋頃までに戦力がもう少し整う事を期待すればそう悪くはないが――」


「ですが策源地との距離が違います、護州はまだしも西州鎮台の補充はどうしても遅れが出る」
 兵站参謀が反論する。

「東州は――まぁそれどころではなかろうな。沿岸の警備に敗残部隊の整理、水軍との調整に皇都との連絡手段の確保――」
 軍組織として孤立した東州を結ぶのは海運、そしてそれを保証できるのは東海艦隊のみだ。

「護州は本拠地で動員と訓練を急速に進めておりますが――皇龍道に配属されている部隊は最低限にとどめているようです。確かに練兵は熱心にやっておるようですが――」

「主攻正面になるのだから我々がとやかく言えることではない――少なくとも今はまだ」

「軍監本部を通して要請を――」

「だが無理に圧力をかけてもかえって動かなくなるだろう――我々が虎城で動ける最大規模の独立兵力となるのは間違いない」

 益満がちらと視線をおくると保胤は微笑してうなずいた。
「それ以上は救援作戦を決行するにあたって予想される状況を想定せねばならぬが――報告会議の趣旨からは外れているだろう。まずはここで一区切りとし、後はまた別の機会を持つことにしよう。
参謀は作戦室に戻り会議内容と報告の評価をとりまとめるように。
司令官閣下からはなにかございますか?」

「救援に対する具体策は軍監部との調整と防衛隊の現状把握がじゅうようだ。あまり先走らぬよう。
それと馬堂中佐は司令官室に来てくれ。話がある」





「さて、良いかな中佐」「はい、閣下」
 
「六芒郭の件をうまく通したのは君の父君だ、そして第三軍からも護衛に君の聯隊を回すように強く求められた。随分と西津殿にも信置殿にも信を置かれているようだな」
 そう言いながら細巻を勧める。保胤は初対面の人間からは見くびられることがあるくらい誰に対しても丁重に敬意を示す。だがそ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ