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純血
第六章
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「じゃあ一緒に食べよう」
「有り難う、悪いね」
「御礼はいいよ。じゃあね」
「ええ。食べましょう」
 お姉さんもだ。僕に笑顔で言ってくれた。
「貴方もそうして下さいね」
「わかりました」
 お姉さんの言葉に応えた。そうしてだった。
 僕達は屋敷の大広間に入ってそこで楽しく食べた。料理は鮎の塩焼きに山菜の味噌汁、人参や大根を煮たものにほうれん草の浸し、それと白い御飯だ。よもぎ餅もある。
 彼の言う通り食材は豊富だった。しかも食べてみると美味い。だが。
 一緒に食べる、座布団の上に正座をして膳を前にして食べる彼と家族の人達を見てだった。僕は何故かこう思ったのだった。
 彼が四人いる、家族の筈なのに。そう思った。
 そこで違和感をかなり感じた。何かが違う、しかも。
 それは村全体であることも感じた。彼に案内されている時に感じた違和感はそれだった。
 そのことを感じながら食事を採った。そうして。
 僕はお風呂も、薪のそれも御馳走になった。それから自分の部屋に戻ろうとする時にだ。
 彼が自分の部屋に行くのを見た。そして寝る前にトイレに行く時に。  
 お姉さんもその部屋に入るのを見た。それも何かが違っていた。 
 この日にそうしたものを見て次の日もその次の日も村を回る中でだ。僕はわかってきた。 
 彼の家族も村の人達も同じなのだ。同じ顔に同じ雰囲気なのだ。何もかもだ。
 僕はこのことに違和感を感じた。そのうえで村での日々を過ごして。
 村から帰った。その時彼が舞鶴まで見送りに来てくれた。その彼が僕に言ってきた。
「気付いたよね
「まさかと思うけれど」
「最後の時に話すよ」
「最後の?」
「言ったね。僕は大学を卒業したら村に戻るんだ」
 彼は僕にこのことを告げた。
「それでもうずっと村から出ることはないから」
「その時がお別れだから」
「そう。その時に話すよ」
 僕が違和感から感じ取ったそのことをだというのだ。
「それについてね」
「わかったよ。じゃあ」
「その時にね」
 こう話したのだった。そうして。
 僕は大学時代を彼と共に過ごした。その四年間は充実していた。
 しかし大学生活が終わり卒業の時にだ。彼から僕に言ってきた。
「この時が来たね」
「うん」
 僕は真剣な顔で彼に対して頷いた。
「そうだね。じゃあ」
「話すよ。来て」
「わかったよ」
 僕は今回も彼に案内された。だが今回はごく普通の喫茶店だった。
 普通の何処にでもある様な、あだがやけにハーブティーに凝っていてメニューもそればかりの店に入ってそのうえでだった。僕達は向かい合って話をはじめた。
 飲むのは当然ハーブティーだ。そのハ
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