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俺の涼風 ぼくと涼風
21. 二人で一人(3)
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…だまってあたいに……ひぐっ……ぎゅってされとけこんちくしょー!!」
「……うん」

 私の泣きながらの文句に圧倒されたのか、今私に抱きしめられ、ほっぺたを合わせてくれてるゆきおは、私に抵抗しなくなっていた。

 心地いい。とてもとても温かく、心地いい。このふわふわのカーディガンも、温かいほっぺたも、私の腰に恐る恐る回している両手も、何もかも、温かい。

 ゆきおがいる。ゆきおが今、私と一緒にいる。

「ゆきお!」
「うん。涼風」
「ゆきお……ッ!!」
「うん。涼風」

 私がゆきおの名を呼べば、返事をして、私の名前を呼んでくれる。ゆきおが私と共にいる。そのことが、こんなにも嬉しくて、こんなにも胸が温かいということを実感した。

 ひとしきりゆきおを抱きしめ、互いに名前を呼び合った後、私はゆきおの顔を見た。月明かりでも、その綺麗な顔が真っ赤になってるのがよく分かる。あれだけ負っていたひどい怪我は、すっかり綺麗に消えていた。

「ゆきお! あたい、ゆきおにプレゼントがあるんだ!!」
「そうなの? なにかくれるの?」
「えっとさ。ゆきおの部屋に置いてあったスコーン! あれ、食べたか?」

 『んー?』と視線を上に向け、ゆきおはしばらく考えた後、冷や汗をかいて苦笑いを浮かべ始めた。これは、気付いてなかったみたいだ……せっかく焼きたてを持っていったのに……

「……ごめん」
「えー……」
「タハハ……」

 ゆきおがまったく気付いてなかったのは少し残念だったけど、それはまぁ仕方ない。ゆきおはきっと今目が覚めたんだろう。そら焼き立てのいい匂いもしなくなってるはずだ。

「まぁいっか!」
「ごめんね」

 そういえば、スコーンの残りを持って帰ってきていることを思い出した。

「そだ! あたい、そのスコーン持ってきてたんだよ。食うか?」

 ゆきおが少しだけ、目を見開いた。そして月明かりでも分かる程度にほっぺたを赤く染め、そして次の瞬間。

「うんっ! 食べる!」

 鼻の穴をぷくっと広げ、力強く頷いた。それを受け、私はゆきおを自分の部屋の中へ通すことにする。ゆきおは『涼風の部屋ってはじめてだ……』とぽつりとつぶやき、私の部屋の中を興味深そうに、キョロキョロ眺めていた。榛名姉ちゃんの部屋のようにキレイに片付けているわけじゃないから、正直、少し恥ずかしい。

「ゆきおー、あんまりキョロキョロ見るなよー」
「へへ……涼風の部屋、はじめてだから」

 キョロキョロするゆきおをベッドの上にちょこんと座らせ、私は持ち帰っていたスコーンを準備し、ゆきおに手渡した。

「はいこれ!」
「ありが……涼風、これは……ッ!?」
「へへ……召し上が……」

 私が食べるのを促す前に、ゆきおは
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