箱庭のリバティ
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がら記入が終わった私は、木札を式場の人に渡してその場を立ち去った。
さて、トラブルもあったけど頼まれた仕事が終わったことだし、報酬をもらったら孤児院のフーちゃんの所へ行こう。カザネさんのことを思い出したからか、なんか無性にあの子に会いたい。どうやら私は、自分で思ってた以上にあの子に情が移ってたみたいだ。これは本格的にフーちゃんの保護者になることも、見当しておかなければならないなぁ。
―――キキーッ!!
「!?」
突然急ブレーキで私の近くに止まった中型車から黒ずくめの屈強な男達が現れ、私の腕を拘束、力づくで車の中に引きずり込まれて刀も捨てられてしまい、強引に組み伏せられた。
「よし、出せ!」
唐突な展開で訳の分からない私を乗せた車は発進してしまい、口元を抑えられている私はロープなどで更に拘束されていく中、これから何をされるのかという恐怖で涙が流れてくる。だが、どれだけ必死に足掻いても今の私は何もできず、ただただ心の中で助けを求めるしかできなかった。
「行動に移した今、もう後戻りはできないぞ、ゲイザー」
「ああ。だが構わねェ、魔導師どもに一泡吹かせるためなら手段なんざ選んでる場合じゃねェんだ! それにな、俺達はあの小生意気なガキから聞いた、停戦協定の真実を知らしめなければならない。行くぜ野郎ども! このまま人質を増やし、奴らの足元を蹴り上げるぞ!!」
「いいぜ! この世界に未来が無いなら、せめて好き放題してから死んでやる!! どうせ管理局に捕まろうが、死ぬのが早いか遅いかの違いだけだしな!」
「そうさ! あんなことを知った以上、もう自棄にならなきゃやってらんねぇ!! 法律や正義なんざ、世界が終わろうって時に守った所で何の意味もねぇからなぁ!!」
「やっべぇ! ヤクを決めたぐらい最ッ高にテンション上がって来たぜ!! 明日の新聞は確実に俺達が一面を飾るんだ!! これまで生きてきた中でこんなに興奮したことなんざ一度も無いぞ!!」
私を誘拐した男達が盛り上がっていくのと対照的に、私は次元世界には奪う事が大好きな人が大勢いるってことを改めて心に刻んでいた。やっぱり、次元世界の人間を信用してはならない……。マキナ……私、もう……誰も信じられないよ……!
「この刀は……」
「また会ったな、首輪付き。早速耳寄りの情報があるのだが、どうだ?」
「神父か……良いよ」
ジャリン(金袋を渡す音)。
「毎度、どこぞの執務官と違って話がわかるな。さて、つい先程、あの時の彼女が誘拐された。……乗れ、奴らの向かった先まで送ってやる。支払額の分は働いてやろう」
そうしてドレビン神父の装甲車に乗った彼の目は、南極の氷のごとく冷え切っていた。
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