箱庭のリバティ
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「僕を……息子とは認めない!?」
あまりにも信じがたい言葉が、僕の存在意義の象徴とも言うべき人物である父さんから発せられたことに、僕は耳を疑った。
今の言葉は嘘であると……ただ意地悪しただけだと、そんな救いを求めて母さんの方を見る。
「母さん、あの子だ〜れ?」
「見ちゃいけません、エリオ。あなただけが私のエリオなのだから……」
だが、母さんは僕のことなんて見もしなかった。ただ、目の前の我が子のみを愛撫していた。彼女にとって僕の言葉は、愚者のざわめき程度にしか聞こえていなかったのだ。
「どうして……そ、そんなはずはない……! だって、僕はあなた達に望まれたから……!」
そうだ、僕は望まれて生まれた。この二人が望んだから、僕はこの世に誕生した。だが、父親となるはずだった男から語られたのは、僕の存在意義を否定するものだった。
厄介な病に伏して余命僅かだったエリオ・モンディアル。近いうちに訪れる我が子の死を受け入れられなかった二人は、裏の世界で広まりつつあったクローン技術にすがった。そして、病弱だったオリジナルの欠点を全て克服した僕が生まれた。
そうだ、エリオ・モンディアルの存在を残すために、僕は生誕を許されていた。そこから先の生き方はまだ知らなかったが、それはいずれ僕を望んだ二人から教えてくれるものだと思っていた。
だというのに……、
病が治ったから代用品はいらない?
違法技術に手を出したことをバレるわけにはいかない?
「そっちが最初に望んだのに……生み出しておいて捨てるの!? 僕を……オリジナルの兄弟としてすら認めてくれないの!? ぼ、僕は……ぼくはただ、いっしょにいられればよかったのに……」
「所詮はニセモノだ。息子の姿をかたどっただけの、まがい物に過ぎない。お前は生まれてきてはならなかった、もういらない子なんだ」
ピシッ。
刹那。今の言葉を受けて、僕の“ナニカ”が壊れた。愛憎、倫理、常識、主義主張、存在意義、生死、全てが狂い、混ざり、歪み、腐り、瞬く間に混沌の暗黒に満ちた。完全な拒絶を見せてきた父親……となるはずだった男に、心が壊れた僕はひたすら叫ぶ。
「あ……あ、あぁぁあああああああ!!!!!!!!!??????? イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ、イヤだぁあああああああああああ!!!!!」
「―――ッ!?」
その瞬間―――僕の身体から天地を焼き尽くすと言わんばかりの黒雷が発生、辺り一面をダーク属性の雷が雨のごとく降り注いだ。血相を変えた親もどきがオリジナルを抱えて逃げるのをよそに、その雷は目の前にあった家を瞬く間に打ち砕いていき、視界に映る光景は一瞬で煉獄へと変貌した。
そうして負の感情に憑りつかれたクローンのエリオ・モンディ
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