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俺の涼風 ぼくと涼風
20. ……
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 朝。朝食を取るよりも早く、私はゆきおの部屋へと向かったが、その扉には昨日と同じく、『面会謝絶』の情け容赦ない立て札がかけられていた。



 私がノムラに誘拐され、ゆきおに助けられたあの後、私はゆきおがつけてきた艤装を足につけ、意識を失ったゆきおをおぶって、摩耶姉ちゃんとともに鎮守府へと急ぎ戻った。

『ゲフッ……ゲフッゲフッ……』
『ゆきおがんばれ!! もう少しで鎮守府だから! まけんな!!!』
『ゲフッ……すず……か……今、助け……ゲフッ……ゴフッ!?』

 意識がとぎれとぎれで戻るのか、それとも寝言みたいなものなのか、時折ゆきおは私の名をつぶやき、すべて終わったのに、咳き込みながら私を助けようとしているようだった。

 摩耶姉ちゃんは、ボートの中で見つけたロープを使ってがんじがらめにしたノムラを曳航していた。ノムラは私とゆきおが抱き合ってる間、激昂した摩耶姉ちゃんに、ひたすら殴られ続けていたらしい。顔中傷だらけで前歯も何本が折れていて、さっきまでの威勢のよさが微塵もない。

 今は海面から半身を出しつつ、なす術なく摩耶姉ちゃんに曳航され、海面から時折顔を出しては苦しそうにゲホゲホと咳込み、摩耶姉ちゃんや私に助けを懇願していた。摩耶姉ちゃんに容赦なく何度も何度も殴られ続けていたノムラは、顔もボロボロでところどころ腫れ上がり、発する言葉も随分と情けない感じになっていた。

『しゅじゅ風ッ! たしゅけろ!! 俺をたしゅけろ!!!』
『……』
『たしゅけるんだ!! 俺がお前を建造したんだぞ!! お前は、俺のしゅじゅか』

 そして、ノムラが私たちに助けを懇願するたび、摩耶姉ちゃんが曳航をやめてノムラを思いっきり殴りぬいて、海に沈めていた。ノムラはその度に苦しそうに『ぐえっ』と情けない悲鳴をあげていたが、私も摩耶姉ちゃんも、助けるつもりはない。

『クしょッ……お前ら艦むしゅだろうが……! ガボっ……俺は提督だじょッ!!』
『あたしらの提督は今の提督だ。てめーなんか知ったこっちゃねぇ』
『鬼かッ……!!』
『いーやこの摩耶さまは優しいね。もし榛名も一緒だったら、問答無用で殺されてたぞ今頃』
『……ッ』
『もっとも今は、それでもよかったんじゃねーかって思ってるけどな。胸糞悪ぃ……』

 そうして私達は鎮守府に到着。出撃ドックに戻った時、そこには、ストレッチャーを出して待ち構えてた白衣を来た数人の人たちと、憲兵さんたち、そして榛名姉ちゃんと提督だった。

『雪緒!! 雪緒!!!』

 私からゆきおを受け取った白衣の人たちをかき分け、ストレッチャーに乗せられたゆきおの元に駆け寄る提督は、血でぐしゃぐしゃになったゆきおの頭を撫で、手を握り、必死にゆきおに語りかけていた。

『急げ!!』

 白衣
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