20. ……
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ら」
「だな。……お前、もう雪緒の相方だもんな」
「相方?」
「二人で一人ってことだよ」
「うん」
提督は、震える右手で私の頭を撫で、そして震える声で私に話しかけてくる。時折『ふぅーっ』と大きなため息をついて、なんだか必死に平静を装っているように見えるけど……
「ところで提督」
「ん?」
「あたいもさ。ゆきおに会いたいんだけど……」
私を見下ろす提督の眼差しが、少し険しくなった気がした。大きく深呼吸をする提督の姿が、なんだか見ていてとても痛々しい……。
「ふぅー……」
「提督?」
「……ごめんな。今、ちょっと会えないんだ」
「そうなのか?」
「ああ。アイツ今、治療中でさ。パンツ姿になってるんだ」
「そっか……」
「あいつのパンツ姿を見るのは、アイツ自身がお前に見せるまで、待ってやってくれ」
……なんだか、以前にも同じセリフを聞いたような……でもゆきおのパンツならもう見たんだけど……でもそれは、今は提督には黙っておこう。
その後『落ち着いたし、そろそろ事情聴取がしたい』ということで、私は提督とともに執務室に足を伸ばすことにした。本当はゆきおの部屋に居たかったのだが、ゆきおの父親に『パンツ姿は待ってやってくれ』とお願いされたのなら仕方ない。私は、私の後ろを歩き、私の背後で時折『……ッく』と声を上げてる提督とともに、廊下を歩き、そして執務室の前のドアの前に到着する。
「んじゃ提督、先にはいるぜー」
「……んー」
私は執務室のドアノブを握り、それを回して、いつものように、でもいつもより少しだけ静かに丁寧に、ドアを開いた。
――バキッ
「あ……」
「……」
静かに、注意深く開けたはずなのだが、蝶番がだいぶもろくなっていたのだろうか。私がドアを開いた途端、そんな痛々しい音と共にドアがはずれた。そしてガタンという音と共に、私が握っているドアノブがはずれ、ドアが床にバタリと落ちた。
「ごめん、提督……」
「……いいよ。俺が直すから、ドアノブくれ」
「あい」
帽子を目深に被った提督に、ドアノブを渡す。提督は以前のように、ポケットから接着剤を取り出すと、それを慣れた手つきでドアノブの接合面に塗っていき、そして倒れたドア本体にぺたりと接着した。
「……やっぱ提督、すげーな」
「すごくなんかねーよ……」
目深に被った帽子のせいで、提督の視線が見えない。そのまま提督はドアノブをガシャガシャと回し、キチンと動くか確認したあと、『……っく』と震えたような声を上げ、ドアを持ち上げて、蝶番をガチャガチャと合わせ始めた。
「……なんでだ……」
でも、以前のようにスムーズに蝶番を合わせる事が出来ない。提督は『……っく』と時折声を上げ、重いドアを
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