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俺の涼風 ぼくと涼風
20. ……
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ぶ。ドアの前に立ち、念の為、ドアをコンコンとノックした。

「おーい! ゆきおー! ゆーきーおー!!」

――はーい 涼風?

 そしてやっぱり、ゆきおからの返事はない。

 少しガッカリとした気持ちを上向きに修正し、私はドアノブに手をかけようと、お皿を支えた右手を離し、ドアノブを回そうと手をかけたその時。

「……!?」
「……提督?」

 私が手をかけるよりも早くドアノブが回り、ドアが開いた。その向こうにいたのは、提督。

「……涼風」
「よっ。提督っ」

 ほんの少し目を赤く腫らした提督が、私の持っているスコーンの皿を見た。私が持つ二つのスコーンは、今も周囲に、香ばしくてちょっと甘酸っぱい、とてもいい匂いを漂わせ、見る人の食欲を刺激し続けている。

「……これは?」
「いい匂いだろ? 今日もゆきおがいつ目を覚ましてもいいように、お菓子持ってきたんだ!!」
「……そっか。ありがと」
「うんっ」

 提督がうつむき、帽子を深くかぶり直した。そして私の手からスコーンが乗った皿を優しく受け取り、部屋の中に入る。

 私も続けて入ろうとしたが、提督はそれを手で制止した。本当は私も入りたかったけれど、当の提督すら、ドアのすぐそばで足を止めているし、私もここは遠慮しておくべきだ。そう思い、無理に中に入るのはやめることにした。

「すまない。雪緒の相方がスコーンを作って持ってきてくれたんだ。ベッドのそばに置いてもいいだろうか」
「いいですよ。むしろその方がいい。置いてあげて下さい」
「……感謝する」

 部屋の中からこんな声が聞こえる。それが何を意味しているのか私には分からない。だけど、スコーンがゆきおのすぐそばに置かれるのは分かる。よかった。スコーンのこのいい匂いをゆきおに届けることが出来る。ひょっとしたら、これでゆきおは目を覚ますかも知れない。

 一度部屋の中に戻った提督が、再びドアから姿を表した。提督はそのままドアを閉じて背を向け、私とドアの間に立ちふさがるように、静かに俯いて、立っている。

「……」
「……提督?」
「……ん? ああ、どうした?」

 その時の提督の声は、私の気のせいかも知れないけれど、少し震えているような気がした。

「あたいのスコーン、置いてくれたか?」
「……あ、ああ! 置いておいた。いい香りだったな」
「うん。あの匂いかいだら、ゆきおも起きてくるんじゃねーかな?」
「……ッ」
「?」
「……そだな!」

 提督は、一度息を大きく吸い、そしてフゥッと息を吐いた後、私の頭に震える右手を乗せ、私をいたわるように、優しく頭をなでてくれた。

「ありがとな。涼風」
「んーん。ゆきおはあたいを助けてくれたし、あたいとゆきおは、二人で一人だか
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