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俺の涼風 ぼくと涼風
20. ……
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ここにいないような気がして。

「……じゃねーと、あたいも、つまんねーよ」
「……」
「あたいたちは、ひぐっ……名コンビなんだろ? 二人で、一人だろ?」
「……」
「ゆきおは、ひぐっ……改白露型4番艦、なんだろ……? 涼風なんだろ?」
「……」
「起きてくれよ……ゆきおぉ……」

 動かないゆきおの手に触れる。ぴくりとも動かないゆきおの右手は、ゆきおの手とは思えないほどに冷たく感じた。しばらくゆきおの手に触れていた後、私はゆきおの部屋を後にしたが……ゆきおは、今日も最後まで、目を覚ますことはなかった。

 自分の部屋まで戻る道すがら、私はゆきおが目を覚ますまでの間、自分に何か出来ることはないか考えた。

 自分がゆきおのために出来ること……看病……ダメだ。あの白衣を着た、男の艦娘の体調管理を担う人たちがやってるという話だ。私が出る幕はない。

 ……だったら、ゆきおがいつ起きてきてもいいように、毎日、ゆきおの好物を作って待っているのはどうだろう? 起きた時に、大好物の甘いモノが目の前にあれば、ゆきおなら、すごく喜んでくれるに違いない。

 決めた。ゆきおがいつ起きてきてもいいように、私は毎日、ゆきおが大好きな甘いモノを作って待とう。毎日一つ、甘いものを作ってゆきおが起きるのを待っていよう。そして起きたら、いの一番に、私が作った甘いモノを食べてもらおう。

 そう決めた私は、早速榛名姉ちゃんに相談し、以前に教えてもらったマフィンのアレンジの仕方や、他にもショートブレッド、鳳翔さんから習った豆大福と冷やしおしるこ……色々なものを教えてもらい、そして一緒に作った。

 そして出来上がったお菓子をその度にゆきおの病室に持っていくのだが、ゆきおは未だに目覚めない。

 それでも私は、毎日作り続けた。ゆきおは今、疲れて眠っているだけだから。きっとそのうち『おはよー』って起きだして、『おなかすいた……』ともぞもぞと動き出し、キャスターの上に置いてある私が作ったお菓子を見て、『お菓子ッ!?』と途端に興奮し、もっちもちのほっぺたになって、私が作ったお菓子を食べてくれるはずだから。

 そして、『あのお菓子、めちゃくちゃ美味しかったな〜……』って口ずさんだ時に、『あたいが作ったんだぜ』って言うんだ。びっくりさせるんだ。きっとゆきおのことだから、『ぇえッ!?』と目を白黒させて、びっくりするに決まってる。その顔が見たいんだ。

 だから、早く起きてよゆきお。あたいとゆきおは二人で一人なんだろ? 同じ涼風なんだろ? ゆきおが起きてくれないと、つまんないよ。寂しいよ。

 今日も私は、榛名姉ちゃんと一緒にお菓子を作る。今日作ってるのはスコーン。生地にラズベリーを混ぜて焼いた逸品。以前に作ったブルーベリーを乗せて焼いたマフィンよ
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