20. ……
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ないと思えるほど、小さく、情けなく見えた。
それが2日前の話。提督の話によると、ゆきおはそのまま自分の部屋で集中治療を受けているらしい。今も意識が戻らないそうだ。艦娘なのに入渠で傷を治そうとしないのは腑に落ちなかったけれど……ゆきおは男の艦娘だし、私達とは違う部分があるのかもしれないと、心に留めておいた。
あの日の翌日に、提督と一緒にゆきおの部屋に入らせてもらい、ゆきおに会わせてもらった。その時のゆきおは、口に変なマスクみたいなのをつけられ、腕にはチューブみたいなのを刺されてて、ピッピッと電子音が鳴る部屋の中で、呼吸の音すら聞こえないほど、静かに眠っていた。
『ゆきお……?』
小さな声で、ゆきおに呼びかけてみる。ゆきおは、ぴくりとも反応しない。顔をよく見る。包帯がぐるぐるに巻かれていて、私からは右目しか見えなかった。
フと、ゆきおの服装が気になった。ゆきおは今、いつもの白い室内着ではなくて、とてもラフなワンピースのような白い服を着ている。テレビドラマとかでよく見る、病院に入院している人が着てるような、とても簡素な服だ。
『……提督』
『……ん?』
『ゆきお、寒そうだ』
『だな』
『あたいが今着てるカーディガン、ゆきおに返してもいいかな?』
『……ああ。ただし、着替えさせるのは医者に任せよう』
『うん』
本当は私が着替えさせたかったんだけど、そう言われたら渡すしかない。私は今羽織っているゆきおのカーディガンを脱ぎ、できるだけ綺麗にたたんで、提督に手渡した。提督は私からカーディガンを受け取り、それをジッと見つめたあと、目に涙をじわっと浮かべ、無言でドアを開き、部屋から出て行った。
その後も、私は足繁くゆきおの部屋に通っている。でも一向にゆきおは目を覚ます気配がない。変わったことといえば……眠っているゆきおの身体が、カーディガンを羽織っていることぐらいか。ゆきおは私が覗く度、まったく同じ姿勢で、まったく同じ表情で、無言で私を迎えてくれた。
今日も私は、ゆきおの部屋にやってきた。『ひょっとしたら起きているかも』そんな淡い期待を胸に秘めて、ゆきおの部屋をノックし、ドアを静かに開いてゆきおの様子を伺うが……
――やっ 涼風っ
今日もゆきおは、電子音が静かに鳴り響くこの部屋の中で、昨日と同じ姿で、静かに眠っていた。私はベッドのそばのソファに腰掛け、静かに眠る、包帯だらけのゆきおの横顔を眺める。
「……ゆきお、おはよ」
「……」
「今日もお寝坊さんか?」
「……」
「疲れたってのはわかるけどさ。そろそろ起きても、いいんじゃねーか?」
「……」
ゆきおに優しく話しかける。もちろん、ゆきおからの返事はない。それがなんだか、ゆきおはここにいるのに、
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