次元の果てのトランクルーム
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ての『重大事故』です…異例ですが、捜索隊を結成して息子さんの捜索にあたります。今すぐにです」
担当者がスマホを取り出し、徐に耳にあてた。…気が遠くなりそうだ。今の俺に分かるのは、俺には何も出来ない…ということだけだ。
新しいタイプの事業には予測不可能な事故がつきもので、事故発生→原因究明→問題解決 それを繰り返してその事業は進化していくものなのだ。つまり事故ってのはある意味必要不可欠なもので…しかし。
―――まさか俺たちが、その事故の張本人になるなんて。
すまない翔、俺が目を離したばかりにお前を事故に
……パパ
お前にも、ママにもどう詫びればいいのか。ママはお前がひょっこり帰ってくると思っているのに
……ねぇパパ
夏休みは岐阜のばあばの家に行く約束だったのに…俺は
……パパったら
うるっさいな誰だ服の裾を引っ張るのは
………って、
「……翔いた――――――!!!」
俺の絶叫はトランクルーム中に轟きわたり、更にその瞬間、日付が切り替わっていた。
俺は仕事を一日、無断欠勤したことになった。
散っ々叱りまくった上で聞き出した内容だが。
最初はちょっとビックリさせてやろう!位の悪戯心で炬燵の裏側に隠れていたらしい。だが俺が探し始める気配はなく、あーあ、つまんないなーとか思っていたら突然俺が消え、また現れたと思ったら何故か服装が変わっているし、血走った眼で家具をなぎ倒しながら自分の名前を叫んでいるし『あ、コレめっちゃ怒られるやつだ』と思うと怖くて出られなかったらしい。
それでも出て来た理由は『おしっこしたくなったから』。
俺はのけ反った。
トランクルームの外で一日待機してた捜索隊も、のけ反った。
後で知ったのだがトランクルーム周辺を包囲していたマスコミ各社も、のけ反ったらしい。
契約時間帯が過ぎて俺たちが消えたあと、四次元トランクルーム初の重大事故は多くのマスコミを呼び寄せた。消えた翔の個人情報はあっという間に全国に知れ渡り、テレビではもう死んだかのような生い立ちを偲ぶ映像が何度も繰り返し流された。
慌てて家に帰って観たワイドショーで中年キャスターが『翔くん、無事に帰れて本当によかったです』と死んだ目で棒読みしていた。ゲストも『お、おお〜』『めでたい、ですぅ〜』とか棒読みで同調し始める、あのなんとも言えないスタジオの空気が個人的に忘れられない。
その後、この件によく似た事件が全国でちょいちょい発生するようになり、翔の件は『四次元トランクルームあるある』として永きに亘って語り継がれることになった。
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