次元の果てのトランクルーム
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わると俺はロクに質問はせず、契約書に判を押した。
トランクルームの操作は基本的には弊社で行いますが、荷物の搬入はお立会い願います。そう云われて、翌々日の14時にトランクルームを訪れ、荷物を詰めた。結構持ってきたつもりだったが、搬入してから眺めまわして見るとまだ余裕がありそうだ。考えてみればトランクルームで四畳半のスペースって結構贅沢だ。こりゃ、バイクもう一台増やせそうだな、とほくほくしながら傍らに居る息子の翔に「読まなくなった絵本も入りそうだぞ♪」と声をかけ
―――ん!?居ないぞ!?
「あ、あれ!?翔!?」
「どうしました!?」
少し離れたオペレーションルームとやらで初期設定をしていた担当者が、駆け寄って来た。
「……息子が」
「えっ…まさか…」
「息子が…翔がトランクルームに!?」
「まじか!!!」
担当者の叫び声を合図に、周辺はざわつき始めた。頭の芯がくらり、と揺れたかと思うと、そのあと額の辺りがサァ…と冷え始めた。。どうしようどうしよう、どうかトイレに居てくれ、その辺で隠れていてくれ…!!心臓をドクドクさせながら周辺を必死に探した。事情を話して開いていたトランクルームの中も見せてもらった。
だが翔は見つからなかった。
「ど、どうなっちゃうんですかコレ!?」
つい半キレ状態で担当者に詰め寄った。担当者…真面目そうな眼鏡の男は、唇と眼鏡を震わせながらも、つとめて冷静に答えた。
「だ、大丈夫です多分。こういう事は弊社内ではよくありまして…そう、翌日の14時にいらして頂けたら」
「だが!!…翔は丸一日、飲み食いが出来ないんだろう!?トイレだって…!!」
「それは大丈夫です。翔君の中では今日の14時と明日の14時は、連続した時間なのです。倉庫に存在しない時間帯は体感時間としても存在しないのですから」
「そ、そうか…」
少しだけホッとした。ならば翔は怖い思いはしていないんだな。
「と、とにかくこんな解決策しか提示できず申し訳ないのですが、翌日の14時にまた、こちらへお越し頂く…ということでよろしいでしょうか…」
「やむをえない」
ここでどれだけ騒いでも翔は戻らない。俺は大人しく帰ることにした。その日は妻と共に、眠れぬ夜を過ごした。
そして翌日の14時。
俺はシャッターが開くのもまどろっこしく、寝ていない瞳をカッと見開いてトランクルームに駆け込んだ。妻もしきりに気にしていたが、家にはまだ産まれたばかりの赤子がいる。無理はさせられない。
「翔―――!!」
と大声で呼ぶ。…返事は聞こえない。再び、さぁ…と血の気が引く。
四次元トランクルームという特殊な場所に来ていたから咄嗟に「すわ、トランクルーム!!」などとトランクルームを悪者にしてしまったが…
ひょっ
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