第七幕:翠碧色の虹
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ちゃん」
七夏「くすっ☆」
時崎「今度から、虹の話、控えるようにするよ」
俺がそう言うと、七夏ちゃんは、
七夏「控えなくても、今までどおりでいいです☆ 柚樹さん!」
時崎「え?」
七夏「柚樹さんは、虹・・・どんな色に見えますか?」
七夏ちゃんから、質問をされた。これは答えない訳にはゆかない。
時崎「虹は・・・七色に見えるよ」
七夏「なないろ・・・普通そうみたい・・・ですね」
「普通」・・・何に対して普通なのかという事だが、ここでは「一般的に」とか「多くの人が」とかいう解釈だろう。七夏ちゃんが、ここで「普通」という言葉を使ってきたという事は、自分は普通じゃないという事を認識した上での事だろう・・・そして、この「普通じゃない」は、劣等感であろう。俺にとって普通とは、自分自身のものさしでしかない。七夏ちゃんが見た虹は、七夏ちゃんにとって、それが普通の事だと思う。そこに優劣なんて存在しないと思う。
時崎「七夏ちゃんは、虹・・・どんな色に見えるの?」
七夏「えっと、緑色・・・ちょっと青色もあるかな・・・」
時崎「という事は、翠碧色か・・・」
七夏「翠碧色・・・」
時崎「七夏ちゃんが見ている自分の瞳と同じ色・・・という事になるのかな?」
七夏「私、虹が虹色に見えなくて・・・それで、他の人とも意見が合わなくて・・・」
七夏ちゃんが昔の出来事を話し出した。
七夏ちゃんが、虹に対してあまり良い反応をしないのは、七夏ちゃん本人には虹は七色に見えず、翠碧色に感覚される為であり、他の人と意見が合わないから。七夏ちゃんが、小学生の時に、学校の野外授業で風景画を描いていたら、偶然、虹が現れた。クラスの皆は、描いた風景画に虹を描き込む・・・七夏ちゃんも同じく・・・。ところが、クラスの一人が七夏ちゃんの描いた虹を見て「なんだ? その色、おいっ! 水風の虹が変だ」と言い、からかわれ始める。そんな七夏ちゃんをかばったのが、天美心桜さんであった事。以降、二人は親友となっているようだ。
七夏ちゃんは、虹が七色に見えていない。緑・青緑・青の3色程度らしい。虹以外の色についてはどうなのだろうか?
時崎「でも、七夏ちゃんにとっては、翠碧色の虹って、普通の事なんでしょ?」
七夏「翠碧色の虹・・・」
時崎「俺は、七夏ちゃんにしか見えない翠碧色の虹、見てみたいなーって、思うよ!」
七夏「・・・・・」
七夏ちゃんは、遠くの水平線を眺めている。俺も遠くの水平線を眺めてみる・・・。
そのまま、どのくらいの時間が経過したのか分からないが、遠くから学校のチャイム音が耳に届き、空の色が茜色になりかけている事に気付かされる。
七夏「柚樹さん・・・ありがとう・・・です」
七夏ちゃんの小さなその言葉は、すぐ波音にかき消されたが
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