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翠碧色の虹
第七幕:翠碧色の虹
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真に良い思い出がないのかも知れない。考えられる事は、七夏ちゃんの目の前で何かの実験のように、興味本位で写真を撮りまくり、見せ物感を七夏ちゃんに与えてしまう事・・・。ここで俺が、更に上塗りしてはならない。写真機をケースにしまう。撮影は、これでおしまいにしようと思った。

七夏「あっ!」

無言で佇む七夏ちゃんの頭に、大きな帽子をそっとかぶせてあげる・・・。七夏ちゃんがこちらに振り返り、視線を大きく動かす・・・瞳の色も大きく変化する・・・どうやら、写真機を探しているようだ。

七夏「柚樹さん・・・写真・・・」
時崎「ん? 写真なら、もう良いのが撮れたから」
七夏「・・・・・」

七夏ちゃんは、不思議そうな顔で此方に視線を送ってくる。俺は、その翠碧色の瞳を見て安心する・・・七夏ちゃんが、しっかりと此方を見てくれている事が伝わってくるから。

時崎「そうだ、七夏ちゃん!」
七夏「は、はい!」
時崎「可愛い七夏ちゃん撮れたよ!」

俺は、さっきケースにしまった写真機を取り出し、先程撮影した七夏ちゃんの写真を表示して、七夏ちゃんに見せてあげる。七夏ちゃんが、写真機の液晶画面を覗き込ん・・・

時崎「うぇーっ!!」
七夏「ひゃっ!? 柚樹さんっ!! ごめんなさいっ!!」

写真機の液晶モニターに映る七夏ちゃんに、気を取られていた俺の瞼に、七夏ちゃんの帽子のツバが当たる・・・突然の事に変な声を上げてしまった。

七夏「ゆ、柚樹さんっ! 大丈夫ですか!?」
時崎「あ、いや、大丈夫。大袈裟な声を出して、ごめん」
七夏「そんなっ! 私のほうこそ、すみませんっ!! 目に入ってませんか?」
時崎「目には入ってないよ、瞼だから大丈夫」
七夏「良かった・・・ホントにすみません・・・」
時崎「くくっ・・・」
七夏「柚樹さん!?」
時崎「あははっ!!」

何か、七夏ちゃんには、いつも驚かされつつも、今回は大きな帽子に感謝する。

時崎「ごめん。ちょっと可笑しくて・・・。で、はい。これ!」

今度は、かぶっていた帽子を手に取り、七夏ちゃんが写真機の液晶画面を覗き込む。そこには笑顔の七夏ちゃん。

七夏「良い写真って、これですか?」

七夏ちゃんが改めて訊いて来る。何故改めて訊いてきたのか疑問に思うが、今、液晶画面に映っている七夏ちゃんは良い表情なので、良い写真である事に間違いは無い。俺は七夏ちゃんの顔を拡大表示して、

時崎「七夏ちゃん、とても良い表情で、可愛いよ!」

勢いで「可愛いよ」なんて言ってしまっているが、冷静に考えれば、かなり恥ずかしい・・・。けど、七夏ちゃんなら、素直に受け止めてくれる事が分かっているからこそ、躊躇いも無く出てきた言葉なのだと思う。俺は他の写真も七夏ちゃんに見せる。

時崎
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