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第九十六話 新生・自由惑星同盟、帝国侵攻呼び水に向けて準備します。
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ーネ皇女殿下は言葉を失っていた。この銀河英雄伝説の世界において、魔力だの教祖だの崇拝だの、非科学的、非現実的そのものではないか。
「そう、君の考えているとおり、彼女は非現実的な存在と言ってもいいかもしれないね。」
ヤンがカロリーネ皇女殿下の言葉を読み取ったようにうなずく。
「――――!!!」
その時カロリーネ皇女殿下の頭の中で何かがはじけた。
「どうしたの?」
ウィトゲンシュティン中将が鋭く尋ねる。カロリーネ皇女殿下の顔から血の気が引いていく。
(非現実的・・・魔力・・・・崇拝・・・まさか、あの人は・・・・・!!)
(転生者!?)
* * * * *
シャロンは夕日に輝く首都星ハイネセンの最高評議会ビルの屋上の議長オフィスの窓辺に佇んでいる。自由惑星同盟の軍服を脱ぎ捨て、ワインレッドのスーツを着こなしている彼女は軍人よりもこのスタイルの方を何年も続けていると錯覚させるほどの風格を漂わせていた。
そのシャロンの手元には二枚の写真がある。
「カロリーネ・エクレール中尉・・・・いえ、カロリーネ・フォン・ゴールデンバウム。」
綺麗な白い指が無造作にカロリーネ皇女殿下の顔を撫で上げる。そして――。
「アルフレート・フォン・バウムガルデン大尉。」
アルフレートの顔にもシャロンの指が這った。
「同盟政府の情報筋も存外無能ではなかったというわけね。この二人は原作にはいなかった人物なことは確か。であれば結論は一つしかないわ。」
シャロンの微笑が夕日に照らされた窓ガラスに反射する。
「フフ・・・・転生者、か。面白いわ。イルーナたち以外にも転生者が来ていたとは。でも、所詮は原作知識があるだけのただの人間。私たちとは根本的に違う存在だという事を否が応でも思い知ることになる・・・・。」
シャロンの指が二枚の写真を無造作にテーブルの上に滑らせた。
「すべては私の手の中にある。原作知識があるだけの転生者であることがどれほどのステータスになるかしら。希望という幻想に浸りながら踊り続けるといいわ・・・・。」
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