第68話<昨日の敵は今日の艦娘>
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そして私は艦娘たちの最後尾から実家へと向かった。
歩きながら私は頭の中で総括する。
深海棲艦というサプライズはあったが、この盆踊りと花火大会の『作戦』も特に大きなトラブルも無く終わって良かった。
気付くと五月雨と寛代が私の両側から手をつないで一緒に帰ってくれていた。
駆逐艦娘の本当の年齢は、小学生よりも遥かに大きい。でも意外と、この背格好の娘が居るだけでホッとする事も少なくない。そういう面で駆逐艦娘は実に貴重だと思う。
「ありがとう」
私は五月雨に声をかけた。
すると彼女は答える。
「いえ、その何か手放しで帰ると心細い感じがするので……」
「……」
やっぱり可愛い。一方の寛代は黙っているが同じ気持ちだろう。
皆で、いったん実家へ戻った。その後で結局、近所の銭湯へ汗を流しに行く事になった。
もちろん鎮守府に戻れば立派な入渠施設はある。でも今日は別に戦闘したわけでもないから普通の銭湯でも良いだろう。
それに、たまには街にある普通のお風呂屋さんに行けば風情もある。
「石鹸は銭湯にもあぁだ(あるよ)」
母親も最初からそのつもりだったのか、ありったけのタオルを準備してくれていた。
「うん」
祥高さんが母親に聞いた。
「銭湯はここから近いのですか?」
母親は答える。
「うちの前を左に出て、大通りを右に行くと川があって……」
説明をする母親を祥高さんが軽く手で制した。
見ると寛代が、いつの間にか地図で検索をして母親が言う銭湯を見つけ出し、通信機能のある艦娘たちに共有し始めていたのだ。
「へぇ、便利なもンだな」
母親の理解も早かった。
艦娘たちは口々に言う。
「銭湯? へぇ、楽しみですね」
「良いねえ、何年ぶりだろう」
その言葉に私は反応した。
「何だ? 北上は経験があるのか?」
彼女は頷く。
「えっと、舞鶴には結構、銭湯がありましたよ」
「あ、そうだったな」
私もかつての軍港を思い出した。
北上は続ける。
「そう思うとね、境港も舞鶴と、似てなくも無いなって」
「そうだな……山もそばにあるしな」
もっとも舞鶴の方が、山は多いが。
私たちは再び実家を出て銭湯へ向かう。
今日はお祭りだったから銭湯も遅くまで営業しているようだ。祭りのお客もソコソコ入っていて、いつもより少し込んでいた。
入り口で時間を調整してから私たちも男女で分かれた。
でも唯一の男子である私は一人だから早く上がってしまう。風呂上りの私は、しばらく脱衣所で新聞を見ていた。
地元紙には特に変わった記事も無い。日本海での戦闘もすべて海軍が戦ったことになっている。艦娘のことは一切触れていない。
(まあ、これが現実だろう)
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