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俺の涼風 ぼくと涼風
19. 絶対に負けない
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「涼風から離れろぉぉオオッ!!!」

 私達の船から10メートルほど離れたところで、摩耶姉ちゃんと二人で水面に立つゆきおが、その手に持った白露型の高角砲をこちらに向け、大きな声を張り上げていた。ここから見る限り、ゆきおの足には、私の主機が装着されている。そしてきっと背中には、私の魚雷発射管を背負っているはずだ。

「ゆきお……ゆきお……」

 フと気が緩んだ。さっきまで恐怖と嫌悪感と恥辱で濁りっていた私の目に、安堵と喜びの涙があふれた。口が微笑み、自然とゆきおの名を口ずさんだ。

「涼風!! ……ゲフッゲフッ……涼風ぇええええ!!!」

 ゆきおが、咳き込みながら私の名を叫び、その声が、私の耳に心地よく、心にトーンと響いた。なんて綺麗な声なんだろう。なんて心地よくて、優しくて、そして美しい声なんだろう。私の心が忘れていた喜びが胸にあふれた。ゆきおが助けに来てくれた。ゆきおが、私の艤装を身につけ、艦娘として、私を助けに来てくれた……

「ゆきお……ゆきお……ゆきおぉおおおお!!!」
「涼風!! 大丈夫!? ゲフンっ……」
「うん……うん……!!」

 雪緒の問いに、私は何度も頷いた。ゆきおの名を呼ぶだけで、こんなにも気持ちが安心する。ゆきおを呼べば、ゆきおが返事をしてくれる……それが、こんなにも胸に温かい。

 咳き込むゆきおの隣では、摩耶姉ちゃんが巨大な艤装を身につけて、探照灯で私たちを照らしながら、腕組みをして立っている。艤装がいつも身に着けているものよりも、一回りも二回りも大きい気がした。……主砲の模様に見覚えがある。あの白黒の縞模様はダズル迷彩……あれは、榛名姉ちゃんの艤装だ。

「涼風! 無事か!?」

 摩耶姉ちゃんに呼ばれ、私は上体を起こして自分の姿を見せた。セーラー服が破かれ下着が顕になった私の姿を見た途端、摩耶姉ちゃんの髪が逆立ち、組んでいた腕を解いて、全身をプルプルと震わせ始めた。バリバリという、歯を食いしばる音が聞こえてくるようだ。

「……おいノムラぁ……テメー……」

 摩耶姉ちゃんが拳をギュッと握りしめる。手袋が絞まるギュギュッという音が私の耳にも届きそうなほど、拳に力が入っていた。

「あたしと榛名の妹分を……雪緒の相方を、好き放題やりやがってよォ……まさか、タダで済むとは思ってねぇよなァ……!!」
「……」
「覚悟しろよ……テメーにゃ涼風以外にも、熨斗をつけて返さなきゃいけない借りが、山ほどあんだからな……ノムラぁあ!!!」

 摩耶姉ちゃんが、本気で怒っているのが見て取れた。私とゆきおが勝手に海に出た時のような、相手を気遣っているが故の怒りではない。ノムラに対する、本当に純粋な怒気だ。

 摩耶姉ちゃんのギリギリという歯ぎしりがここまで聞こえた。不釣り合いに大
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