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俺の涼風 ぼくと涼風
19. 絶対に負けない
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る。

「ゆきお!!!」
「う、嘘だ……嘘だよぉ……あんなに、大切に……したのに……こんなに、愛して……」

 私は急いでゆきおのもとに駆け寄り、後ろ手に拘束された両手でゆきおをつかむべく、ゆきおに背を向ける。

「ゆきお! しっかりしろ!! ゆきお!!!」
「うん……あり……ゴフォッ!?」

 私の手にしがみつき、なんとか身体を起こしたゆきおは、ぐったりと私の身体にもたれかかってきた。血と海水の匂いに混じって、ゆきおの消毒薬の香りが、フッと私の鼻に漂う。ゆきおは咳き込む度に、海水や血を吐き飛ばし、傷だらけの顔も青白い。

「ウソだ……嘘だ……涼風は、俺の……俺だけの……!!」

 一方のノムラは、うわ言のように『俺の涼風』と言いながら、フラフラと力なく後ずさっていった。やがてボートの後部にノムラが差し掛かった時。

「おい」

 バキッという音が聞こえ、ノムラが力なく盛大に吹き飛んだのが見えた。倒れたノムラの、向こう側から見えた姿は、服がボロボロになって、体中齧られた痕と血だらけになっている摩耶姉ちゃんだった。榛名姉ちゃんの艤装が、巨大な手の形に展開してる。私は初めて見たけれど、そういえば、榛名姉ちゃんの艤装は、大きな手の形に変形できるんだった。

「摩耶姉ちゃん……」
「摩耶……さん……ゲフッ……」

 摩耶姉ちゃんがノムラを睨みつつ、私の方に何かを投げた。すでにかなりの深さまで浸水している私の足元に落ちたのは、小さなニッパーだ。

「雪緒、手は大丈夫か?」
「左手……なら……ゲフッ……ゲフッ……」
「なら充分だな。そいつで涼風の拘束を解いてやれ。出来るか」
「うん……でき……ゴフッ……」
「上等だ相棒。あたしの妹分を助けてくれて、サンキューな。さて……」

 ゆきおが震える左手でニッパーを拾い上げた。力が入っているかどうかも疑わしい左手で、震えながらニッパーを持ち、右手はダランと下げたまま、ゆきおは私の背後にまわる。

「涼風……ゲフッ……遅くなって……ごめ……ゴフッ……」

 私は無言で、力いっぱい首を横に何度も振った。今、私の拘束をといているゆきおが、それに気付いているのかは分からない。だけど私は、首を力いっぱい、横に振った。胸がいっぱいで声が出せなくて、『そんなことない』『謝らなくていい』って言えないから、代わりに私は、首を横に何度も振った。

 パチンという音が聞こえ、私を拘束していた結束バンドが取れた。ドボンという重い音が聞こえたから、普通の結束バンドとは全然違うものだったみたいだ。だけどそんなことはどうでもいい。

 私は、無言で振り返った。そこには、体中ボロボロで、顔も傷だらけで髪は血塗れ……身体は華奢で細っこく、みかけはとても頼りない、改白露型駆逐艦の4番艦が
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