19. 絶対に負けない
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…を……はな……ゲフッゲフッ……」
ゆきおが動かない身体に鞭打って、少しずつ、這いつくばって私の方に近づいてきた。デッキの上で自分の顔を引きずりながら、それでも少しずつ前に進むゆきおには、もう立ち上がる力もないようだ。それでもなお、ゆきおは前に進む。
バンという拳銃の発砲音が鳴り、私の鼻に火薬の匂いが届いた。再びノムラの拳銃から煙が上がってる。
「ゆきお!!」
「……ッ」
弾丸はゆきおの鼻のすぐそばを通り、デッキに穴を開けたようだ。そこから浸水がはじまり、ゆきおの顔が次第に水の中に沈み始めた。
私はゆきおの元に駆け寄ろうとしたが、ノムラに身体を拘束されている。必死にノムラの腕を振り払おうとするけれど、ノムラの力が強くてそれが出来ない。結束バンドの食い込みが痛くて、動くことが出来ない。動こうとすると、ノムラが容赦なく結束バンドを引っ張ってくる。
「フッ……フッ……」
「俺から涼風を奪おうとした罰だぁ……俺の涼風の名前を語ったおしおきだぁ……!」
「フッ……ゴフッ……フッ……」
「ごめんなさいと言え。……俺の涼風の名前を語ってごめんなさいと言えぇえ!!!」
私の耳元で、ノムラが下衆な微笑みを浮かべてる。ゲヘゲヘと笑いながら、ゆきおを見下してる。浸水は進み、ゆきおの顔の半分ほどが水に浸かっていた。苦しそうに、時折咳き込みながら呼吸するのが精一杯だ。
……だけど。私とゆきおは負けない。改白露型4番艦の私たちは、こんな奴に、絶対に負けない。
「……ゲフッ……涼風は、お前のものじゃないッ。お前なんかに……絶対に渡さないッ!」
「!?」
私を拘束するノムラの腕に、力が篭ったのが分かった。私の動きを制止するためじゃない。ゆきおによって湧き上がる、自分の怒りを押し殺すためだ。ワナワナと全身を震わせるノムラの顔が、再び醜く歪む。
「涼風は……ぼくと、二人で……ゲフッ!! ひと……りだッ……!!」
「まだ言うのかぁああアアア!!?」
ノムラが逆上し、空を見上げて大きな声を張り上げた。イライラが最高潮に達したらしく、拳銃を持つ右手で頭をバリバリとかきむしり、そして醜く歪んだ顔で私を見た。
「ハァ……ハァ……涼風」
「……」
「お前は……俺の、ものだよなぁ……」
絶対に違う。私は、何度でも何度でも、何度でもお前を拒絶する。お前なんか大嫌いだと言ってやる。私はゆきおのものだと、ゆきおと私は二人で一人だと、何度でも言ってやる。
「あたいは、ゆきおのものだッ」
「ヒッ……!!?」
「みんなを殺したお前なんか……あたいのゆきおをこんなにいたぶったお前なんか、大嫌いだ」
ノムラの腕が、震えながら私を放した。私はノムラの腕を振り切り、すぐにゆきおのもとに駆けつけ
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