19. 絶対に負けない
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の度に周囲に血が飛び散っていた。
「おいガキぃ……」
ノムラがニチャリと顔を歪ませ、再びゆきおの髪を持ち上げた。ゆきおは痛そうに顔をしかめ苦しそうに咳き込むが、それでもノムラを睨むことを止めはしない。
「最後のチャンスだぁ……自分が涼風だと言ったことを謝れぇ……俺の涼風を汚したことを、謝るンだ……」
「ゲフッ……ゲフッ……ぐふっ……ゲフッ……」
「ほれぇ……」
「……悔しいんでしょ……」
「……ッ」
「大好きな涼風に……拒絶されて……力づくでも自分のものにできなくて……ゲフッ……弱々しいぼくを、力で……ゲフッ……言うこと、聞かせられなくて……!」
「……ッ!!」
「大好きな涼風をぼくに取られて……自分は他のものを全部捨てて涼風を大切にしたのに……涼風に愛されなくて……ゲフッ……ゲフッ……しかも、涼風はぼくと二人で一人で……!! だからぼくに八つ当たりして……ッ!!」
「お前……ッ!」
「ゲフッ……ぼくが大好きな涼風は、そんな奴には、絶対に負けない……だから……!! 同じ涼風のぼくも、お前みたいな情けないヤツに負けないんだッ!!!」
声を発する度、口から血の飛沫を飛ばしながら、それでもゆきおは、ギッとノムラをにらみ、ノムラへの屈服を拒否した。それを受けて、ノムラの顔がどんどん歪んでいく。冷や汗をかきはじめ、見るからに狼狽え始めた。
「取り消せ!! お前は涼風なんかじゃないッ!!! 謝るんだよほらぁあッ!!!」
「謝らないッ!! ゲフッ……お前なんかに、絶対……ゴフッ……負けないッ!!!」
「クソガキがぁあ!!!」
ノムラが、ゆきおの頭を再びデッキに叩きつける。『ん゛っ』と小さなうなり声を上げてデッキにたたきつけられたゆきおは、全身がぐったりしているが、それでも、血を吐きながら私の顔を見た。
私は、ゆきおの顔を真っ直ぐに見た。細っこいゆきお。小さくて非力なゆきお。とても優しくて、女の子みたいに綺麗な顔をして華奢なゆきおが、私の為に必死に戦ってくれている。私の名を冠して、私と同じ気持ちで、私と同じように戦ってくれている。私は、ボロボロになりながら、それでもノムラに負けじと立ち向かうゆきおの姿に、涙が止まらなくなっていた。
ノムラが再び私の元に来た。私の後ろに立ち、私の胸に後ろから左手を回して私を抱き寄せ、それをゆきおに見せつけるように立った。ニチャリとあざ笑い、拳銃をゆきおに向け、引き金に指をかけた。
「何する気だよノムラ!! やめろ!!! ゆきおを撃つなやめろ!!!」
「黙っててくれな涼風……ハァーハァー……すぐ終わるからなぁ……」
私の抗議にも、ノムラは耳を貸さない。その顔には、私と同じくゆきおの血しぶきがところどころついていた。
「やめろ……ゴフッ……涼風…
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