19. 絶対に負けない
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私達の間に割って入る。ザバッという音ともに、ゆきおの身体が持ち上げられたことが分かった。そのままノムラはゆきおの身体を振り回し、ボートの前方にゆきおを投げすてた。ゆきおの背中には、思った通り、私の魚雷発射管が背負われ、そして左手は血に塗れ、右手には私の高角砲が握られていた。
「ゲフッ……ゴフッ……ゲフンッ……」
「よくも!! よくもお前ごときが……」
「ゴフッゴフッ……ゴボッ……」
「俺の涼風の艤装をぉおオッ!!!」
ゆきおは今、私の方に頭を向け、うつぶせでぐったりと倒れこんでいる。顔中が傷だらけで、左目が腫れ上がっている。見ているだけで痛々しい。
……ゆきおの口から、血が垂れていることに気付いた。
「ゴボッ……ゲフッ……ゴブッ……」
咳き込む度、真っ赤な血を吐いていた。ゆきおの様子がおかしい。顔色も酷く悪い。照明弾に照らされているのを差し引いても、青白くて血の気が感じられない。高角砲を持つ手も何かおかしい。右肘の曲がり方が不自然だ。本当なら曲がらない方向に……関節とは逆の方向に、肘が曲がってる。
「ゆきお!! 身体がおかしいのか!? ゆきお!! ゆきお!!!」
「ゲフッ……がフッ……ゴホッ……」
「腕どうしたんだよゆきお!!! 返事しろ!! ゆきお!! ゆきお!!!」
ゆきおの身体に少しだけ力が戻ったみたいだ。震えながらも少しずつ身体を起こし始めたゆきおは、私の顔を見て、ニッコリと笑ってくれる。だけど口から出ている血が痛々しい。右腕も動かせないみたいだ。肘から下に、ぷらぷらと力が入ってないのがわかる。
「すずか……ゲフッ……」
「ゆきお!」
「だいじょ……ぶ……すぐ、助け……ゲフッ……ゴボッ!?」
血が止まらない。ゆきおの綺麗な顔のいたるところに傷ができている。痛々しい。ゆきおは口では大丈夫というが、本当に辛そうだ。咳き込む度に血が止まらない。
ノムラがスタスタとゆきおの元に移動し、身をかがめ、ゆきおが背負った魚雷発射管を引っ張って、ゆきおの背中から引き剥がしにかかる。ゆきおの背中を踏み付け、無理矢理に魚雷発射管のベルトを引きちぎり、ノムラは満足げな表情を浮かべた。
「どぅーだ……クソガキの分際で、涼風の艤装なんぞつけやがって……」
「ゲフッ……」
「艦娘でもないただの小僧だろう……だから肘が外れるんだよぉ」
へ……? 肘が外れた? 高角砲で? 艦娘なのに?
「高角砲にしちゃ音が軽い。大方演習用の模擬弾か何かを装填してたんだろうが……」
「ハァ……ハァ……ゲフッ……ゲフゲフッ……」
「それでも高角砲だぁ……艦娘の真似なんかするから……そうなるんだよお!!!」
ノムラが醜く顔を歪ませ、ゆきおの右肘を蹴り上げた。途端にゆきおはさっき以上の痛
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