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俺の涼風 ぼくと涼風
19. 絶対に負けない
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 私の手にピチャピチャと飛沫が飛んでいる。まさかノムラは、拳銃の柄でゆきおを殴ってるのか。

「なにやってんだ!!! ノムラやめろ!!! ゆきおを離せやめろノムラッ!!!」

 何も出来ない……摩耶姉ちゃんならなんとかしてくれるかもしれない……一縷の望みを託して、私は摩耶姉ちゃんの方を見た。

「摩耶姉ちゃん!! ゆきおが……!!!」

 だが、摩耶姉ちゃんは私たちを助けることが出来ないということを即座に理解した。摩耶姉ちゃんは今、たくさんの深海棲艦たちに囲まれ、自身も体中を駆逐ハ級に齧られ、雷巡チ級に押さえつけられ、主砲で狙い撃つことも出来ず、水面に倒れこんでいた。

「クソッ……涼風……雪緒……ッ!!」
「摩耶姉ちゃんッ!!?」

 摩耶姉ちゃんが私達に向かって精一杯、左腕を伸ばしていた。でもその左腕は、複数の駆逐ハ級に齧られ、やがてたくさんの深海棲艦にもみくちゃにされていた。

「ゲフッ……ゲフッ……ッく!!」
「お前……それは……!!」

 私の背後で、チャキッという音が聞こえた。ゆきおとノムラの動きが止まる。私の背後で何が起きているのか分からない。振り向けない。

「涼風ッ!!」
「!?」
「頭下げて!!!」

 突如叫んだゆきおの剣幕に、私は疑問も感じる隙もなく頭を下げた。

「くらえッ!」
「んあッ!?」

 バスンという、聞き慣れた高角砲の音が、二人の声と共に私の背後で鳴り響いた。ノムラがのけぞり、バランスを崩す。そして……

「あぁぁああぁぁあぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!?」

 周囲に響いたのは、のけぞったノムラの声ではなく、ゆきおの痛々しい叫び声だった。

「ゆきお!? 何があったんだよ!? ゆきお!!?」
「ふぐぅ……ゲフッ……ゲフッ……ぅぅぅ……!!」
「返事しろよ!! ゆきお!! ゆきお!!!」
「ゲフッ……ゲフッ……ゴフッ!?」

 ゆきおの手をつかむ私の手に、一際大きな飛沫がかかった。バシャッという音と共に、私の手がべっとりと濡れたことが伝わった。やけにぬるぬるするその液体は、私とゆきおの手を滑らせ、ゆきおの手をしっかりと掴むことが出来なくなってきた。

「お前……ッ!!」

 バランスを崩していたノムラが体勢を整えた。顔をしかめ、眉間に皺を寄せ、フーッフーッと呼吸を乱し、私の背後にいる、ゆきおをギンと睨んでいるのが見て取れた。

 一方のゆきおは、私の背後で、私の呼びかけに返事をせず、ただただ咳き込んでいる。私の手を掴むゆきおの手に力が感じられない。私は必死に、滑るゆきおの手を掴んでいるけれど……

「その艤装は……その高角砲はぁああ……ッ!!!」

 『ぉぉおおおおあああああ!!!』と禍々しい叫び声を上げ、ノムラ再び
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