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俺の涼風 ぼくと涼風
19. 絶対に負けない
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こえ、摩耶姉ちゃんがぐらりと姿勢を崩す。駆逐ハ級に砲撃されたようだ。

 それを合図に、摩耶姉ちゃんが周囲の深海棲艦から一斉に砲撃された。バキンバキンと音が聞こえ、摩耶姉ちゃんの周囲に煙が立ち込め火花が飛び散り、ゆきおと摩耶姉ちゃんがその煙に撒かれ、再び姿が見えなくなった。

「ゆきお! 摩耶姉ちゃん!!」
「バカなやつらだよぉお!! 周囲の深海棲艦に気が付かないんだからなぁ!!! 散々言ったろ!? 索敵は厳にってなぁあ!! 気持ちがいいなぁ涼風!! 俺とお前を邪魔しに来た奴らはいなくなるぞ!!」

 煙が立ち込める、二人の居場所をジッと見つめる。砲撃が鳴り止まず、煙が収まる気配がない。雷巡チ級を筆頭に、全員が魚雷を発射した。魚雷はゆきおと摩耶姉ちゃんの元に、まっすぐに伸びていく。摩耶姉ちゃんは大丈夫だろうけど、ゆきおが心配だ。艤装を装備しているとはいえ……将来艦娘になる男だとはいえ、ゆきおがこの砲雷撃の雨あられをその身に受けたら……

『全速ぜんしーん……』
『行け……相棒……ッ』

 ノムラが高笑いをし、魚雷が進行していくこの状況で、私の耳に、かすかに届く声があることに気付いた。この声はゆきおの声で、そのセリフは、どこかで聞いた覚えがあるものだ。私は注意深く耳をそばだて、ゆきおが何をやろうとしているのかを推理した。

 ……分かった。私はゆきおが何をするつもりなのか、理解が出来た。

――涼風! スピード!! スピード落として!!!

 ゆきおが考えていること……それはきっと、二人で海に出た時に私が見せた、渾身のロケットスタート。

 次のゆきおの叫びが、私の理解を確信へと変えた。

「よぉぉおおおそろぉぉぉおおおお!!!」

 ゆきおの身体が、『ドカン』という音とともに、すさまじい加速を伴って煙の中から飛び出てきた。そしてそのまま猛スピードで深海棲艦の間を駆け抜け、私たちの乗るボートまでたやすく到達し……

「なんだとッ!?」
「てぇぇぇええやんでぇぇええええ!!!」

 そのままの勢いで、その小さな身体で、ボートにガツンと体当たりをした。ゆきおの身体は小さいが、今のロケットスタートのスピードと勢いは絶大だ。そんなゆきおの体当たりは、ボートを転覆しそうなほどに大きく揺らした。

 ノムラはずっと立っていた。だからゆきおがボートを揺らすことで、バランスを大きく崩し、その場に盛大に倒れてしまう。私は腰を下ろしていたから、大きく揺らされるだけで済んだ。

 ボートに体当たりという無謀なことをしたゆきおは、そのままボートのへりに捕まり、なんとかボートに乗り込もうとしていた。ゆきおの両手はプルプルと震え、へりに捕まり続けるのも大変なようだ。

「ゆきお!!」

 グラグラと揺れ続ける船上で
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