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俺の涼風 ぼくと涼風
19. 絶対に負けない
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いた。

「涼風……ゲフッ……」
「ゆき……」
「……ただいま。東京から……ゴフッ……帰って、来たよ」
「あの……」
「待っててね……今、ゴフッ……カーディガンの前、閉じるからね」

 ゆきおが、力なく微笑んだ。肩で息をして、口から血を垂らすゆきおは、震える左手だけで、私が着ているカーディガンのボタンを、上から、一つ、また一つと、手間取りながら留めていく。

「……あれ……ゲフッ……」
「……」
「ハハ……ゲフッ……ごめんね……ヘタで……」

 もう手に力が入らないのだろうか。ゆきおは最後のボタンを留めようとし、血まみれの手を滑らせて、何度も何度も失敗していた。

「ごめんね……ゲフッ……」
「……んーん」

 私のカーディガンの最後のボタンに苦戦して苦笑いを浮かべるゆきおの首に、私は、ゆっくりと自分の手を回した。

「あれ……ゲフッゲフッ……留められない……ゲフッ……」
「いいよ。もう……いいよ、ゆきお」
「ダメだよ……ゲフッ……寒いでしょ……風邪引いちゃうよ……ゲフッ……ゲフッ……」
「いいって……」
「ヤだ……涼風のキレイなお腹……ゲフッ……誰にも……ゲフッゲフッ……見られ、たくない……」
「ゆきおで隠すよ」

 ……もういい。もう十分だよゆきお。もうカーディガンは充分閉じてる。私は、カーディガンのボタンに苦戦するゆきおを抱き寄せ、ゆっくりと優しく、だけど強く強く、感触を確かめるように、しっかりと抱きしめた。

「すず……」
「ゆきお……ッ」

 ゆきおの左手が、カーディガンからポトリと落ちた。私はゆきおのほっぺたに自分のほっぺたを重ね、ゆきおの身体と自分の身体をぴったりと重ねた。私の胸に、ゆきおの胸の音が届いているのを感じる。トクントクンと優しく響くゆきおの音は、私の胸に、安堵と喜びをもたらしてくれた。

「ゆきお……ありがと……ありがとッ……!!」
「んーん……だってぼくらは……二人で、一人じゃないか……」
「うん……ッ」
「僕らは、一緒にいなきゃ……ダメだから……」
「うん……ッ!」

 ゆきおの左手が力なく持ち上がり、私の腰に静かに添えられた。もう力が入らないらしく、私を抱き寄せる力も、私を抱きしめる気力も、何もかもが尽きたようだ。それでもゆきおは、私の腰に手を添えてくれた。私が抱き寄せるゆきおの全身も、力が入ってないようにぐったりとし、そしてとても冷たい。だけどゆきおは、私の腰に手を添えてくれた。

「……涼風、あったかい」
「ゆきおは……ひぐっ……つめたい」
「涼風……」
「ん?」
「よかった……無事で、よかった……」
「ゆきおのおかげだ……ありがと……助けてくれて……ホントに、ありがと……!!」
「うん……」
「ホントに……ありがと……ゆき
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