19. 絶対に負けない
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きい摩耶姉ちゃんのダズル迷彩砲が、稼動音を鳴らして砲塔を動かす。微調整を繰り返した後、砲塔がピタリと止まった。その狙う先……それは私達が乗るボートだ。こちらからでも分かる。
「ボートをぶち抜く。雪緒、耳塞いでろ」
「はいッ」
摩耶姉ちゃんとゆきおの会話が聞こえ、ゆきおが高角砲を構えるのをやめて耳をふさいだ。摩耶姉ちゃんの迷彩砲がギラリと輝き、ガシャリと砲弾が装填される音が響いた。
「素直に涼風を返せノムラぁ!!!」
「涼風も砲撃に巻き込むだろうが!!! 俺の涼風を危険にさらすなッ!!!」
「テメーが言うなクソッタレが!!!」
突如、『パン』という音と共に、探照灯の光が無くなって、私たちを暗闇が包み込んだ。
「え!?」
周囲が見えない。摩耶姉ちゃんとゆきおの姿が暗闇に紛れて見えない。ノムラの右手を見る。どこに隠し持っていたのか、その手に拳銃が握られていた。銃口から煙が一筋立っている。これで摩耶姉ちゃんの探照灯を撃ちぬいたのか。
「ゆきお!! 摩耶姉ちゃん!!!」
たまらず二人の名前を呼ぶ。ゆきおの咳混じりの『大丈夫!!』の声が聞こえ、ホッと胸をなでおろしたのもつかの間。周囲に、チャポン、チャポンという音が聞こえ、一つ、またひとつと、生き物の気配が感じられるようになった。この気配は……
「おい摩耶ぁ……聞こえるか」
「あン!?」
「俺が涼風の回収ポイントとして、なぜここを選んだのか、分からんのか?」
「いちいちそんなこと考えてられっかバーカ!!」
「残念だなぁ……涼風と違って、昔から残念だなぁ……お前は!!!」
ノムラが、左手をズボンのポケットに突っ込んだ。ポケットの中に入っていたのは照明弾。ノムラが照明弾を上空に向け、トリガーを引いた。バシュッという音と共に一筋の煙が空に立ち上がり、やがて夏場の太陽よりも眩しい輝きが、私とノムラの乗る船を中心に、周囲を照らしだす。
「!?」
「んだとッ!?」
眩しい光を自分の腕で遮っていたゆきおと摩耶姉ちゃん、そして私は、周囲を見て愕然とした。駆逐ハ級や雷巡チ級……たくさんの深海棲艦たちが、姿を見せていた。
「元々この海域は深海棲艦が多いんだよなぁ……」
「……チッ……やっぱこうなるのかよ……ッ!!」
周囲のあちこちから、キリキリという嫌な音が鳴り始めた。駆逐ハ級が魚雷の装填をはじめ、雷巡チ級が砲塔をゆきおたちに向け始めたようだ。
「無防備な俺達とフル装備のお前たち……深海棲艦にとって、どっちが脅威だろうなぁ? どっちが、先に殲滅すべき存在だろうなぁ?」
「……クソが」
「ほーら……狙い始めたぞ?」
ノムラがニチャリとあざ笑い、首を左に傾けた。その瞬間、摩耶姉ちゃんの艤装から、ガキンという音が聞
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