蒼雷の恋慕 05
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「……今日は少しばかり疲れたな」
仕事を終えた帰り道、我は気が付けばそう呟いていた。
まだまだ桃子殿達の店のように繁盛しているわけではないが、日に日に我が店も客足が増してきている。
今はまだ我ひとりでもどうにか出来るが……このペースで行くと休日は苦しいかもしれんな。かといってノーヴェはバイトであって正社員ではないし、あやつにもあやつの都合がある。現状でもシフトは入っておるのだから単純にバイトを増やすしかないか。
「しかし……」
単純にバイトを増やしてもすぐにやめられては困る。また増やし過ぎてもまだ軌道に乗っているとはいいがたい時期だ。
働きに見合う給料を支払うことが出来なければ働いてくれた者にも悪い。また何よりそんな状況を作った自分を許すことができない。他人に迷惑を掛けるならば自分がそれだけ苦労した方がマシだ。
「……かといって」
我はこれまで散々注意や小言を言ってきた立場だ。自分は働き過ぎて倒れるようなことになれば説得力がなくなってしまう。
いやそれ以上にあやつらのように生命に関わる仕事でもなく、完成品を納める期限があるわけでもない。それなのに心配を掛けるような事態になるなど……申し訳なさと恥ずかしさで堪えられぬ。
「…………さて、どうしたものか」
バイトの数は増やすべきだ。これはノーヴェからも言われている。
『ディア姐さんの提供するもののレベルはそのへんの店より上なんだし、絶対客足は増えるって。今はまだあたしらだけでもどうにかなるけど、早めにバイトは増やしてた方が良いと思う。あたしも可能な限りここのシフトは入れるつもりだけど……チビ共の相手しなくちゃいけない日もあるから』
先日このように言っておったからな。
ちなみに共に働いておることもあって少しは距離が縮まったぞ。まあ下手に敬語を使われてもボロが出たりするからもっと砕けて構わんと言ったのだがな。
ただ一言言っておく。別に姐さんに関しては我が付けろと言ったわけではないからな。むしろ我は呼び捨てで構わんと言ったぞ。さすがにそれは無理と言われてしまったがな……。
昔……すずかにもディアーチェで良いと言ったような覚えがあるが、結局ちゃん付けのままだったな。すずかの性格を考えるとおかしくないことではあるが、我は無意識に人を威圧してしまっておるのだろうか。学生時代に呼び捨てにしてきた者など数えるほどしか居らぬし。
「やはり言葉遣いが悪いのだろうか……しかし、これが原因で人から嫌われたことはない。あくまでの我の知る限りでだが……小鴉などの影響もあるが王さま王さまと慕ってくれておったよな? 別に我の思い違いではないよな? そのはず……」
大体昔のことを今更思い返して嘆いても意味がない。今見るべきは未来のことだ。
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