巻ノ百 後藤又兵衛その十三
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「貴殿等はな」
「これからもですな」
「十一人で」
「共に生きることじゃ」
そうせよというのだ。
「そして共にな」
「同じ場所、同じ時にですな」
「死ねと」
「そうすべきじゃ」
こう言うのだった。
「それが貴殿達の生き方じゃ」
「そうですか、では」
「これからも」
「うむ、そうされよ」
ここで後藤はこうも言った。
「わしも迂闊に死なぬ様にする」
「そうされますか」
「必ずな」
後藤自身もというのだ。
「だからな」
「はい、それでは共に」
「そうして轡を並べる時があればな」
「思う存分に戦いましょうぞ」
「そうしようぞ」
二人で笑って話した、そして清海も言うのだった。
「ですな、後藤殿がお味方ならば」
「御主もそう言ってくれるか」
「はい、百人力です」
「そうか、そもそもわしが思うに」
「と、いいますと」
「わし等は争うべきではないな」
飲みつつだ、後藤は清海に言った。
「互いにな」
「それは何故でしょうか」
「うむ、似ておる」
自分と幸村達はというのだ。
「己を曲げず卑怯未練は嫌いじゃな」
「はい、そう言われますと」
「権威や冨貴も求めておらぬな」
「そうしたものには興味がありませぬ」
一切という言葉だった。
「我等は」
「そうじゃな、それも同じじゃ。そうした者達が互いに争っていいことはない」
「だからですか」
「争うよりもじゃ」
「共に戦うべきですか」
「そう思う、わしは武士として生きたい」
これが後藤の第一の願いだった。
「殿の下にいてはそれが出来ぬ」
「そう思われてですか」
「これが一番大きかった」
出奔の理由は一つではないがというのだ。
「だから出たしのう」
「だからですか」
「うむ、わしは家を出た」
一万石以上あった禄も捨ててだ、当然家老の地位も官位もだ。
「そうしてここにおる」
「そして時が来られれば」
「戦う」
「武士として」
「そう考えておる」
「そうですか」
「そうじゃ、御主達と共に戦いたい」
後藤はまた言った。
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