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俺の涼風 ぼくと涼風
18. “絶対に負けない”
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んかに負けない。私はお前なんか大嫌いだ。

「あたいは……お前なんかのモンじゃねぇ……!!」
「……ッ」
「あたいは……!」

 何度でも言ってやる。目を見て、睨みつけて言ってやる。全力で拒絶してやる。私はお前のものじゃない。私は、ゆきおと二人で一人なんだ。お前なんかに絶対に負けない。

「あたいは……ゆきおと、二人で……一人だッ!!!」
「……ッ!!
「だから……あたいのすべては……ゆきおのモンだ……!!!」

 私の全力の拒絶を受けて、ノムラの両目がピクピクと痙攣しはじめた。私の予想外の拒絶の意志の強さが、ノムラを混乱させているようだ。私の顔をがっちりと挟んで固定している両手に力がこもり、私の顔を潰す勢いでぎゅうぎゅうと締め上げていく。

「い、いいだろう……でもな……そう言えるのも、今の内だよぉお!!」

 ピクピクと痙攣する眼差しを向け、開いた口からヨダレを撒き散らしながら、ノムラが私の首筋に噛み付いた。痛みよりも何よりも、悔しさと嫌悪感で頭がどうにかなりそうだ。

「っくッ……ゆきお……ッ」

 首筋に、ノムラの舌の、べたりとした熱い感触が襲いかかる。抵抗出来ない。身体が動かせない。ノムラの荒い息遣いが気持ち悪く首にまとわりつく。呼吸も出来ない。したくない。呼吸すれば、ノムラが吐いた息を吸ってしまう。ノムラの匂いをかいでしまう。いやだ。こいつの息なんて吸いたくない。こいつの匂いなんか大嫌いだ。

「ゆきお……ゆき……お……ッ」

 私の首筋を貪ったノムラが、上体を起こした。そして自分のベルトに手をかける。荒い息遣いで私の顔をジッと見据えた。私は動けない。ノムラを睨みつけることしか出来ない。抵抗出来ない。力が出ない。

「ゆきお……」
「……へへ。ふはぁ……」
「助けて……」

 助けて。ゆきお……助けて。

「涼風ッ!!!」

 突如周囲に、今、私が一番聞きたかった声がこだました。その瞬間、私の身体に、かすかに力が戻った。聞き間違いかもしれない……最初はそう思ったけれど。

「ゲフッ……涼風ぇええッ!!!」

 また聞こえた。ノムラも私から視線を外し、大海原の方を訝しげに見ている。私もなんとか上体を起こし、声が聞こえた方角を見た。

「……探照灯か?」

 強く眩しい光が、周囲を照らす。眩しさで顔をしかめつつ、私はその輝きの奥にいる、二人の人影をジッと見つめた。

「涼風から離れろぉぉおッ!!!」

 間違いない……この、優しいけれどよく通る声……でも、今は凛々しくて、とても頼りがいのある、雄々しい雄叫びのような声は、私が一番聞きたかった声だ。私の涙が、悔し涙から安堵と喜びに変わる。

「涼風は、ぼくと二人で一人なんだッ!!!」

 探照灯の光の中に
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