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俺の涼風 ぼくと涼風
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あがっていた。

「すげーな榛名……あんなにアバウトに作ったのに、すんげー美味しそう」
「これはね。特に簡単に出来るレシピなんです」
「へー……」

 思った以上にあっけなく……でもとても美味しそうに仕上がった6つのマフィン。その一つを手にとって、紙のカップを引っ剥がし、早速できたてのマフィンを一つ、味見してみることにする。摩耶姉ちゃんも同じく『あちっ……あちっ……』と言いながらマフィンに手を伸ばし、カップを剥がして、丸々一個をそのまま口に放り込んでいた。

「「んー……」」
「……どうですか?」
「「……ん!!」」
「美味しいですか?」
「おいしい! 榛名姉ちゃんこれおいしい!!」「うめえ!! これうめえぞ榛名!!」
「よかったです」

 あまりの美味しさにため息が出る。こってりというほど甘ったるくもなく、かといってあっさりというほど素っ気ないわけでもない、ちょうどいい甘さの生地に、ブルーベリーのすっぱさがよく合っている。

 試しに生地の部分だけを食べてみたが、やはりブルーベリーも一緒に食べないと物足りない。生地の甘さとブルーベリーのすっぱさが口の中で混ざり合って、ちょうどいい甘酸っぱさになって広がっていく。

 生地の甘い香りとブルーベリーのあまずっぱい香りが、鼻の奥を駆け抜けていくのが心地いい。あんなに簡単に作ったものとは思えない。そこいらで売ってるカップケーキに負けない出来のマフィンだった。

「ホント美味しい!!」
「ブルーベリーだけじゃなくて、桃や他の果物を入れてもいいですし、チーズや野菜を入れる人もいます。甘さを抑えて、そのままプレーンで紅茶と一緒に食べるのも美味しいと思いますよ」

 言われて気付く。確かにこの味は、紅茶に合うはずだ。いつも食べてたのが和菓子だったから、いつもは苦いお茶が欲しくなってたのだが、今日は紅茶が飲みたい……そんなことを考えていたら。

「ホントおいしいなー!」
「……」
「なぁ榛名姉ちゃんも食べな……」
「……」

 榛名姉ちゃんは、焼きあがったばかりのマフィンを一つ手にとって、懐かしそうに……でも、泣きそうな、複雑な眼差しで、そのマフィンをジッと見ていた。そんな眼差しでマフィンを眺める榛名姉ちゃんは今、何を思っているんだろう。

「……榛名姉ちゃん?」
「……ぁあ、どうかしました?」
「んーん……」
「?」
「なんか……ジッとマフィンを見てたから」
「あぁ……」

 摩耶姉ちゃんも、マフィンを食べるのをストップし、榛名姉ちゃんの顔を見ていた。私と摩耶姉ちゃんから見つめられたからか、榛名姉ちゃんはマフィンを見つめるのをやめず、懐かしそうに、静かに口を開いた。

「……これ、あの鎮守府にいた時に、私と金剛お姉様で考えたレシピなんです」
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