17. 戻る日
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? シーハー……」
「おっさんみたいだなお前……いや、お前が上手にお菓子を作ればな?」
「うん」
「雪緒が、満面の笑みで喜んで、お前を褒めてくれるんだぞ?」
「ゆきおが……喜ぶ……」
その時、私の脳裏に浮かんだビジョン……それは、もっちもちのほっぺたになって幸せそうに、私が作った豆大福を頬張るゆきおの姿だった。なぜかゆきおの背後では眩しい光が輝いていて、豆大福を食べ終わったゆきおの目は、キラキラと輝いていた。
――涼風、おいしいっ。まるでぼくと涼風みたいだっ。
「……にへぇ……」
「ヨダレたれてんぞ」
不思議だ。私が作ったお菓子をゆきおが喜んでくれる……たったそれだけのことなのに……それをちょっと想像しただけなのに、途端に顔がだらしなくにやけてしまう。ゆきおが、私が作ったお菓子を食べてくれる……そして褒めてくれる……
「なぁ摩耶姉ちゃんっ」
「あン?」
ダメだ。想像しただけで胸いっぱいになるし、顔がぽかぽかと温かい。これは作らない手はない。私は早速摩耶姉ちゃんにお菓子の作り方を教えてもらうことにした。
「なんかお菓子の作り方おしえてくれ。めちゃくちゃ美味しくてあたいにも作れそうなほど簡単なやつ。んで、出来ればあたいとゆきおみたいなやつ」
「無茶振りすぎんだろッ! だいたいあたしがそんなお菓子の作り方を知ってるはずがねえッ!!」
無茶振りだったのか……摩耶姉ちゃんは途端に耳から水蒸気をピーと出しながら、ぷんすかと怒りだした。ちくしょう。摩耶姉ちゃんのアホ。あたいだってゆきおにほめられたいのに。『美味しい』って言われたいのに。
ひとしきりぷんすかと怒りを表現した摩耶姉ちゃんは、イライラしながらお茶をズズズッとすすっていた。そんなに大きな音を立ててはしたない……でも今言ったら余計な怒りを買いそうだ。ズズズ……
「……こういう時の適任がいるだろ?」
「適任?」
「おう」
私が頭の上にはてなマークを浮かべて首をかしげていたら、摩耶姉ちゃんが得意げに親指を上げ、そのままそれを食堂の出入り口に向けた。そこには……
「ったく……榛名は容赦なしデース……誰も勝てないネ……」
「一航戦の私ですら……ただ艦載機をパラパラと落とされるだけとは……」
「プークスクス……だから濃口醤油なんて言われるのよ」
「開始早々艦載機を飛ばす間もなく大破したウスターには言われたくないわね」
「でもだいぶ連戦してたけど……榛名ー、平気? 疲れてない?」
「はい!」
……いた。こういう時の適任者が。今しがた一航戦五航戦とタイマン勝負をしてきて、完膚なきまで叩きのめしてきた、この鎮守府でも筆頭の実力者にして、私と摩耶姉ちゃんが持ってない女子力を存分に秘めた、ザ・大和撫子が。
「榛
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