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俺の涼風 ぼくと涼風
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 ゆきおと提督が鎮守府を離れて二週間が経過した。鎮守府全体がお休みといえば聞こえはいいけれど、言ってみれば機能停止。悪く言えば、『やることがなくてヒマな状況』だ。最初の日からしばらく間はみんなそれぞれ休みを謳歌していたが、3日め辺りから、みんなヒマを持て余し始めたようで、最近は演習場での艦隊演習や危険のない遠征などを中心に、艦娘たちが自主的に活動を行っている。もっとも、潜水艦のみんなだけは、ずっと休日を謳歌しているようだけど。

 私も、最初こそゆきおがいなくて寂しい思いをしていたが、日が経つにつれ、それも徐々に薄れつつあった。日が経てば経つほど、ゆきおが戻ってくる日が近づいてくるということもある。最近では私もみんなと遠征に出たり、摩耶姉ちゃんや榛名姉ちゃんたちと共に演習を行ったり……そんな、楽しい日々を過ごしている。

 今日も私は、暁型のみんなと一緒に遠征に出た。思ったより早く資材の搬入も終わり、今は摩耶姉ちゃんと一緒に昼食を取りに食堂に向かっている。そんな私の肩には、ゆきおから預かったクリーム色のカーディガンが羽織られている。

「なー涼風ー」
「んー? どしたー摩耶姉ちゃん?」
「今日も雪緒のカーディガン羽織ってるのな」
「うん。あったけー」
「そっか。ニッシッシ」

 ゆきおから預かったカーディガンは本当に温かい。こうやって羽織ってるだけなのに、身体がぽかぽかと温かく、そして手触りもとても心地よい。だてにゆきおが『あったかいよ?』と私に貸してくれたわけではない。

 それに、このカーディガンに染み付いたゆきおの消毒薬の香りが、まるでゆきおと一緒にいるかのような気分にさせてくれる。このカーディガンは本当にいい。ちょっと袖が長くて、私の手がカーディガンから少ししか出てこないのが少し悔しいけれど。ゆきおってこんなに腕が長かったっけ……。その事実が少しだけ悔しい。憤りにも似た感情を抑えつつ、私は手の出ていないカーディガンの袖をぶらぶらと揺らした。

「そういやさ。榛名姉ちゃんは?」
「あいつは今、大型艦同士のタイマン演習に出てるから、昼飯は少し遅くなるってさ。金剛型のみんなと食べるから、先に食っててくれって」
「ふーん……」

 カーディガンの袖を少しまくりながら、私は摩耶姉ちゃんのセリフを聞き流す。まくったカーディガンの袖は、すぐにストンと伸びていた。

 みんなが自主的に演習や遠征をやり始めた時、まず最初に榛名姉ちゃんが戦艦のみんなに演習を申し込まれていた。かつてあの鎮守府で揉まれていた榛名姉ちゃんは、みんなの中でもとりわけ練度が高い。よそから来た練度の高い榛名姉ちゃんは、元々この鎮守府にいた血の気が多い戦艦のみんなが気にしていたようだ。長門さんや武蔵さんが、サシの演習を申し込み、演習という名のタイマン勝負が
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