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俺の涼風 ぼくと涼風
16. ちょっと行ってきます
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機を飛ばし、そしてその紙飛行機が、稀に見るケッタイな軌跡を描いて墜落していったあの日。二人で一人の私達が出会ったのが、あの日だったんだっけ。

 なぜかそんなことを思い出しながら、私は窓を見つめ続けた。しばらく見つめていたら、窓のカーテンが開き、ついで窓がバンと開いて、ゆきおが顔を覗かせた。いつもの真っ白い室内着ではないけれど。カーディガンも羽織ってはいないけれど……ダッフルコートを着たゆきおが、窓から顔をぴこっと出した。

 『ゆきおが窓を開けた』という事実が、私の胸を高鳴らせた。

「ゆきおー!!」
「? すずかぜ?」

 気がついた時、私はあの日のように、ゆきおに向かって盛大に手を振り、そしてゆきおの名を叫んでいた。

「ゆーきーおー!!」
「涼風……すずかぜー!!」

 そんな私に対し、ゆきおもあの日のように、私の名を呼んで、パタパタと右手を振ってくれる。

「準備は終わったのかー!?」
「終わった! これから出る!! ちょっと待ってて!」

 ゆきおはそう言い、慌てて窓をバタンと閉じていた。そして待つこと数分。

「ハッ……ハッ……おまたせっ!!」

 革製のアンティークっぽいキャリーケースを引きずって、ゆきおが宿舎の入り口に姿を見せた。そのままゆきおは、キャリーケースをガラガラと引きずりつつ、桜の木の下へ……私の元へと、急ぎ足でやってくる。珍しくそんな風に急いでセコセコと動いているゆきおが、何と無しにおかしかった。

「どうしたの?」
「ゆきお、もうすぐ出発だろ?」
「うんっ」
「だから見送りに来たっ!」
「……そっか。ありがと。ちょうど出るとこだったんだ」

 聞けば、どうやら提督とは正門で待ち合わせをしているらしい。正門にはすでに、迎えの車が到着してるんだとか。

 もうすぐ、ゆきおは行くのか……。

「じゃあ……」
「うん?」
「正門まであたいがついてってやるよ!」
「いいの? ケホッ……」
「てやんでぃッ! あたいとゆきおはコンビで、二人で一人なんだろ?」
「うん」
「だったらあたいがゆきおを見送らないで、誰がゆきおを見送るってんだべらぼうめえ!」

 これは、半分はウソだ。本当は、少しでも一緒にいたいからで……

 でもゆきおは、私のワガママに対して、ほっぺたを少し赤くして、でもとてもうれしそうに満面の笑顔を浮かべながら、

「ケホッ……ありがと!」

 と咳き込みつつ言ってくれ、キャリーケースを持ってない方の手で、私の手を握ってくれた。

 デートの日のように、正門までの道のりを二人で歩く。はじめこそ今日の朝ごはんの献立のことや、摩耶姉ちゃんと榛名姉ちゃんの昔話なんかを面白おかしく話していたのだが……

「……」
「……」


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