16. ちょっと行ってきます
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人につめよる少年探偵のように……おっ。なんかゆきおみたいだ。
「なぁ摩耶姉ちゃん」
「……榛名に聞け」
「榛名姉ちゃん教えてくれよぉ」
「あは……あはは……えっと……」
なんでだ? なんで教えてくれない? ひょっとして、私はなんか不味いことでも聞いているのか? ゆきおのパンツを見たいというのは、そんなにいけないことなの?
「おい涼風」
「ん?」
二人の困惑っぷりに私も困惑し始めていたのだが……ここでちょっと不機嫌そうな顔をした……でも顔真っ赤っかだけど……摩耶姉ちゃんが、お茶をすすりながら私を呼ぶ。
「そのフードコーナーのお姉さん、何て言ってたんだ」
「それが分かる頃には、ゆきおもあたいにパンツ見せてくれてるって言ってた」
「それが全てだ。いい加減察しろよ。六駆の奴らじゃねーんだからお前は」
「うん?」
なんでそこで六駆のみんなの話が出てくるのかさっぱりわからない。後ろの方で『へくちっ』『暁、風邪?』『き、きっと一人前のれでぃーのこの暁の噂が……ッ!?』というセリフが聞こえてきた。うわさがあるとくしゃみをするってのは、本当だったのか……
それ以上は二人共、うんともすんとも言わなくなってしまい、ついに『その時』とは何かを私は知ることが出来なかった。姉ちゃんズのアホ。肝心なときに頼りにならない……ゆきおと正反対じゃないかっ。
食堂でのひと悶着の後、私は一度部屋に戻った。今日から鎮守府は休みに入るから、私たちは出撃も遠征もない。ゆきおもいなくなるから、しばらくは暇な日々が続くことになる。
時計を見ると午前9時。ゆきおは今、東京に向かう準備をしているのだろうか。
9時半になるのを待って、私はゆきおの宿舎へと足を運ぶ。確かゆきおは、10時には鎮守府を出ると言っていた。それぐらいに足を運べば、見送りぐらいは出来るはずだ。一緒に行くことも出来ないし、その間は離れ離れになる。せめて見送りぐらいはしたい。
ゆきおの宿舎に向かうため、私は入渠施設の前を通り、桜の木の前に来た。季節はもう冬本番。吹き付ける風も冷たいし、桜の木も、すでに葉っぱはすべてキレイに落ちている。
強い風が吹き、私の肩を冷やした。でも不思議と、ノムラの恐怖にふるえていた時のような、嫌な寒さは感じない。今の私には、この冬の厳しい寒さも心地いい。息が白い。ひょっとしたら鼻も赤くなっているのかも……。冷たくかじかみ始めた手を、白くなった自分の息で温めた。
ゆきおの部屋の窓を見上げる。そういえば、ゆきおとはじめて出会った時も、私はあの窓を眺めてたんだっけ。あの時と違って、今は窓は閉じているけれど。でも、あの日のことは昨日のことのように思い出せる。見ているこちらが思わず息を呑むほどの真剣な表情で紙飛行
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