16. ちょっと行ってきます
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もつられて笑いつつ、二人の話を聞いている。提督とゆきお……似た物親子の血みどろの戦いは、私たちを笑いの渦へと巻き込んでいた。
ひとしきり頭を打ち付けた提督が冷静を取り戻し、再び帽子を被って私たちの方を向き、席に座った。その顔には、さっきのような真っ赤に染まったほっぺたはない。
「……どっちからだ」
「何が?」
「どっちが誘ったんだ」
急に冷静になった提督の突然の追求には、ゆきおもさすがにうろたえたようだ。ゆきおの身体が、少しのけぞったのが分かった。
「なんで?」
「……いいから答えろって。お前か? 涼風か?」
いくら今までゆきおに追い詰められてたとはいえ、やはりそこは百戦錬磨の大人の提督。本気になれば、逆にゆきおを追い詰めていくのは容易いらしい。
昨晩二人で眠ったのは、原因の大半は私にある。私がワガママでゆきおに寝転んでもらい、話をしているうちに、私が眠ってしまったことが原因だ。
「あ、あのさ提督……」
「なんだ涼風」
「えっと……あたいが……」
これは素直に言うべきだ。私は意を決し、昨晩のことを提督に謝罪しようとした。
だけどその瞬間、ゆきおが私の手をガシッと握った。その力は、いつになくとても強い。
「僕がワガママ言った!」
「え……?」
「……」
ゆきおが、私をかばってくれた?
「発端はお前か?」
「僕がワガママ言った。涼風が珍しく夜に遊びに来たから、『いっしょにねようよぉ』てワガママ言ったんだ」
「……ホントか?」
ダメだ。ワガママを言ったのは私だし、先に寝てしまったのも私だ。それなのに、ゆきおに濡れ衣を着せるわけには行かない。私もゆきおの手を強く握り、自ら冤罪をかぶろうとするゆきおを制止した。
「提督! あたいだ!! あたいがワガママ言ったんだ!!」
「??」
「怖くて怖くて眠れなくて……だからゆきおの部屋に行って、『一緒に寝てくれ』てせがんだんだ!! だからゆきおは悪くねえ!!」
「どっちだよ……」
「あたいだよ! ワガママ言ったのはあたいだッ!!!」
「違うぼくだ!! ぼくが父さんみたいに『いっしょにねようよぉしゅじゅかじぇー』てワガママ言ったんだよ父さんの息子なだけにッ!!!」
「どさくさに紛れて自分の父親の羞恥心を煽るのはやめろッ!」
「違うあたいだ!! ゆきおはあたいのワガママに付き合ってくれただけだ!! どこかの甘えん坊な父親と違ってッ!!!」
「お前も自分の上官をさりげなく辱めるのはやめるンだッ!!」
提督とゆきおの諍いに私も参戦し、果てしなくしょぼい言い争いは泥沼の様相を呈してきた。私とゆきおは手をつなぎ、提督を辱めつつ、互いに『ほくだ!!』『あたいだ!!』と罪をかぶり、提督はそんな私達の暴言に
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