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俺の涼風 ぼくと涼風
16. ちょっと行ってきます
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 正門が近づいてくるに連れ、二人とも言葉を発さなくなってきた。私たちの間に会話が無くなり、ゆきおが引きずるキャリーケースの音だけが、ガラガラと鳴り響く。

「……」
「……」

 今日を境に、しばらくゆきおと会えなくなる。本当はもっと色々と話したいことがあったはずなのだが……不思議と、言葉を発することが出来なくなってきた。いつの間にかつないでいる、この温かいゆきおの手を、しばらく握ることが出来ない……そう考えただけで、なんだか気持ちが沈んでいくのが分かる。

 こっそりとゆきおの横顔を見る。ゆきおは、私のように俯いてなどいなかった。まっすぐに前を見て、その眼差しはとても真剣だった。

 ゆきおが、こんなまっすぐな眼差しをし始めたのはいつからだろう?

「ケホッ……すずかぜ」
「ん?」

 ゆきおが咳き込みながら、私の名を呼んだ。ここ数日、ゆきおは咳き込むことが増えてきた。以前に『風邪だ』て言ってたけれど、それをこじらせて長引いているのかも。

「ぼくが東京に行くのはね。艦娘になるためなんだ。ケホッ……」
「そうなのか?」
「うん。東京で身体の精密検査をして、問題がなければ手続きして、艦娘になって帰ってくる」

 なるほど。私が睨んだ通りだったようだ。やっとゆきおは、艦娘になれるらしい。

「よかったなゆきお! やっと艦娘になれるんだな!!」
「うん。これでやっと、涼風と肩を並べて戦えるんだ」

 そういうと、ゆきおは私の顔を見て、目を輝かせてニッと笑う。私も、ゆきおと一緒に海に出られると思うと、楽しみで胸が踊る。ゆきおと一緒に出撃できるという事実は、私の胸を弾ませた。きっと、誰よりも頼りになる。摩耶姉ちゃんよりも、榛名姉ちゃんよりも頼りになる。だってゆきおは、私と名コンビで、私とゆきおは、二人で一人だから。

「ところでゆきお、艦種は?」
「まだわかんない。だけどきっと駆逐艦だ。ぼくは身体が小さいし、背格好も涼風と変わらないから」
「そっか!」
「改白露型がいいなー……涼風とお揃いの艤装をつけたいな……あ、でもこのことは他の人には言ったらダメだよ?」
「お、おうっ」
「父さんにも言わないでね? 怒られちゃうから」
「お、おうっ」

 再び前を向き、正門に停っている車を眺めるゆきおの眼差しは、とてもキラキラと輝いている。ゆきおが黙っていた理由は、私と離れる寂しさからではなく、東京から戻ってきたら、私と一緒に海に出られるんだという楽しみで、胸がいっぱいになっているからだったのか。

 私も、気分を切り替えよう。こんなに希望に満ちあふれているゆきおに、『寂しい』なんて言えるわけがない。

 それに、ゆきおはすぐに戻ってくる。そして、戻ってきた時は、史上初の男の艦娘になっているんだ。そし
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